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【令和3年7月豪雨】災害支援1か月レポート(熱海市土砂災害)

7月3日の熱海市土砂災害発生後、緊急災害支援チームを派遣し、食料・水・衛生用品やその他必要物資をお届けしました。
その後も無料バス送迎などの生活復旧支援を継続、現在は住民の心のケアとコミュニティ復旧のための活動が続いています。

未だ5名の方の行方が分からず現地ではまだ緊急支援のフェーズとして捉えるべきところもありますが、
捜索活動は自衛隊から消防隊へ移り、避難者の帰宅や被災者住宅の受付も始まり、生活の再建が始まろうとしています。

私たちはこれまでの災害支援の経験から、緊急期~生活復旧期に入るこの時期は心のケアがとても重要であることを認識しています。
突然の出来事に物理的ニーズと生存することが心を占めていた時期を乗り越え、喪失感や孤独感、不安が心に入り込むようになるのです。ストレスから認知症や鬱など深刻な症状が進む恐れもあります。

目に見える生活再建のお手伝いをすると同時に、声にならない「助けて」に耳を傾け、心がおいてけぼりにならないよう、誰一人置き去りにされることがないよう、真のニーズに寄り添った支援を続けていきたいと思っています。

皆さまのご支援、ご協力により災害支援が支えられ、被災者の方々に希望をお届けできたこと、スタッフ一同感謝申し上げます。7月4日から1か月間のレポートをご報告させていただきますのでぜひご覧ください。
また、今後の継続支援にもぜひご協力いただけますよう心からお願い申し上げます。

調査チーム派遣・緊急支援活動開始

熱海伊豆山土石流

7月3日午前に発生した土石流に関し情報収集を開始、翌4日には南相馬市の災害支援拠点から調査チームが現地に向かいました。
静岡県内外の連携団体に確認をとりつつ、より危険性のないルートで、特に甚大な被害を出している熱海市伊豆山区へ。
市内の避難所、浜会館・泉小中学校へ物資をお届けし、途中でお会いした在宅避難者の方々にも個別支援を行いました。

在宅避難されていた女性:
「(固定)電話が壊れていてね、お隣もいないし、病院へ行けなくなったけど連絡できずに困っていたの。助かりました。ありがとう。」
災害情報も行き届いていなかったので、状況をお話し、当面の飲料水と食料、ラジオと懐中電灯をお渡ししました。

地域の必要を教えてくださった女性:
「実は避難所に行けない人や情報が届かない人がいるんです。私たちも皆さんに足を運ぶことができないし、物資もないので手伝ってほしいのです。」
この方のお話をもとに、町内会のサポート、在宅避難者を探し支援する活動が始まりました(調査チームから緊急災害支援チームへ)。

物資配布、配達支援

令和3年7月豪雨 熱海土砂災害 緊急支援

災害発生直後は被災地の差し迫ったニーズを満たすため、まずは食料、水、衛生用品やその他重要な物資配布をスタート。
パートナー団体からの情報により地域の福祉施設を訪問、状況をお聞きし必要物資をお届けしました。
支援を始めてから約2週間は、生活用品、衛生用品の緊急物資と合わせ、町内会からの要請により市から配給されるお弁当(1日3食)を戸別配達、数が合わない場合は追加手配をすることもありました。

「いつもの移動販売もストップしていて買い物ができないでしょう。もう年だからね、毎日毎食、この坂を公民館までとりに行くのもできなくて、こうして届けてもらえるのは本当に助かります。」
と言っていただいたり、毎日足を運んでいたおかげで玄関先でお話をしてくださる方も増えていきました。
お弁当や物資だけではなく、「気にかけている人がいますよ、独りじゃありませんよ」というメッセージもお届けできていたらと願っています。

現在もまだ物流が止まったままですので、要望をお聞きして物資手配・配達支援を継続しています。

支援物資(7/4~8/3):
不織布マスク、アルコール消毒液、ラテックスグローブ、清拭タオル、非常食セット、ペットボトル飲料水、お茶、麦茶、缶ジュース、果物ジュース、ミルクティー、缶コーヒー、菓子パン、総菜パン、お弁当、食事配布用ビニール袋、簡易トイレ、懐中電灯、ラジオ、デッキブラシ、消毒液ほか
(延べ2226名を支援)

断水による飲料水配布支援

令和3年7月豪雨 熱海土砂災害支援

断水地域では給水所が6か所設置されていましたが、足を運ぶことができない在宅避難者のため飲料水を配布、熱海市社会福祉協議会が運営している物資倉庫へも飲料水の提供を行いました。

伊豆山という地名の通り、急こう配の坂が多くまさに「山」を上ったり下ったり。町内会の配慮でできるだけ車が通れるよう許可をとっていただきましたが、それでも人足が必要なところが多く、2リットルの水は持ち歩くことができません。在宅避難されているお宅には、500mLの飲料水をできるだけバックパックに詰めてお届けしました。

在宅避難者支援

令和3年7月豪雨 熱海土砂災害支援

8月3日時点の静岡県の発表によれば、291名が避難生活を送っていますが、在宅避難者はその数に含まれていません
これまでの被災地では多くの場合、支援物資を手に入れられるところ、炊き出しがもらえることろというのは行政が指定する「避難所」でした。
避難所へ行くことができない人には物理的支援も、そういった情報も届かずに支援の網から漏れてしまっている現状があります。

私たちはこれまでの災害支援の経験とソーシャルワーク(福祉的支援)の知識と技術を持って、パートナー団体との協働により「市民ソーシャルワーカー育成プロジェクト」を起ち上げ、今回の熱海市土砂災害においても、障がいのある方やその家族、一人暮らしの高齢者を含め、誰ひとり孤立することがないように、お一人おひとりの希望に沿った活動に取り組んでいます。

「熱海というリゾートという土地柄、移住してこられる方も少なくない地域です。まだ地域コミュニティになじめていない方は、この突然の被災で頼る人もなく心細い思いをされていることと思います。ぜひお声がけを続けてもらえればと思います。」
私たちに信頼を寄せてくださっている自治体の方からのお言葉です。

「大変なのは私だけじゃないから」と心に不安や悩みを抱えたまま過ごされていた方々も、「外部の人」だから話しやすいということもあり、少しずつ心を開いて下さっています。そういった方がコミュニティにつながることは、在宅避難者支援にとどまらず、地域コミュニティ回復の支援にもつながると期待し声をかけ続けていきます。

私たちは東日本大震災やその後の災害支援において、被災者が生活を再建するまでの長い道のりで、ともすればコミュニティの分断や孤立が起こってしまう恐れ、それによって被災された方の心が折れてしまう可能性もあることを目の当たりにしてきました。自立し再建を果たすその日まで、生きる意味を支えてくれる人の存在が不可欠です。

地域で支え合うことは最も優先されることですが、その地域を支えている「地域の方々」が疲弊してしまわないよう、心が折れないよう、災害支援が不要になるその日まで、私たちはサポートを続けていきます。

無料バス送迎支援(移送支援)+心の健康支援

令和3年7月豪雨 熱海土砂災害支援

仲道地区を含め伊豆山地域の広範囲で路線バスの運行が休止されています。その為、車など移動手段を持たない住民の皆さんは、買い物や病院に行くことが困難な状況で代替え交通手段の実現が急務でした。そこで町内会と相談し、定時や走行ルートの固定は行わず、多様なニーズに対応出来るように、フレキシビリティのある無料バス送迎支援を開始することとなったのです。(通行規制のある場所でも通ることができるよう許可証をいただいています。)

90代の女性:
「いつも東海バスに乗って病院へ行っていたのだけど、今はどこへも行けずに困っていたんです。椅子から立ち上がるのもやっとで、バス停に歩いていくこともできず・・本当に助かります」
とうっすら涙を浮かべてお話してくださいました。

移住して12年、ほとんど外出はしていないという女性:
唯一通行できる海沿いの道を走っている時、海を見て、「きれいな海やねー。こんなに近くで海を見たの初めてやわ。この道を自動車で通るのも初めてやから。家の窓から見る海と全然違って見えるわ。」と楽しそうに話してくれました。帰路につき、自宅に到着したとき、「ほんとにありがとうございます。お兄さんの運転はすーっとなめらかーに氷の上を滑っているようで、安心して乗っていられる。安心出来る。ほんまに運転上手いなぁ。」と笑顔で話し、「また連れてってくれる? お願いしますね。」と言ってくれました。

無料バス送迎支援は移動手段の提供というだけではなく、対面会話を通して心の健康支援も行っています。

生活復旧支援(荷物運搬、ゴミ出しなど)

令和3年7月豪雨 熱海土砂災害支援

避難所からの一時帰宅が始まり、当面の生活用品の運搬やゴミ出しなどをお手伝いしました。
ご自宅まで車が入れないものですから、大きな荷物を持って家と駐車場を行き来しなければなりません。また、数日間留守にしていた家の中、冷蔵庫の中など捨てるゴミが少なくありません。

「家の中があの時のままでね。この湿気と暑さで色々と・・・避難所から戻れるのはいいけど、もう気がめいっちゃうね。」

時が止まったままの家を目の当たりにすることはそれだけでも心に負担がかかります
生活再建のその時までに心が折れてしまわないよう、お一人お一人に心を配りサポートを続けていきます。

地域交流支援(健康たいそう)

仲道地区 健康体操

避難生活で離れていたお友達やご近所さんとの再会の場、交流の場を作ることにより、生活再建と心の健康を保つ手助けになるよう、町内会主催の「健康たいそう」をサポート。
伊豆山小学校体育館で健康運動療法士の講師による「椅子に座ったままで出来る健康体操」を開催しました。

会場の確保や設営、緊急時のバックアップを担当するとともに、知り合いの方含め困っていることはないか、聞いてほしいことはないか、参加者の声に耳を傾けて、ニーズを確認しています。

体操後は和やかな雰囲気で会話をされていて、体操前とは打って変わって皆さん明るい表情で帰っていかれました
それ以後、毎週開催し交流を続けています。

避難呼びかけ・台風8号に備え

熱海市伊豆山 台風に備え

7月26日、台風8号接近のため、伊豆山地域に「避難指示」が発令されました。
仲道地区では消防団と町内会が各戸へ訪問して避難を呼びかけ、市からの送迎バスに乗り避難所へ向かいました。

避難所へ向かわずに在宅避難を選ぶ方もいましたので、食糧と飲料水を配布することに。台風前の酷暑の中、みんな汗だくで腕がパンパンになりながら台風に備えお届けしました。

地盤が緩んで二次被害にも不安の大きい地域、今回は熱海周辺では大きな影響もなく皆さんほっとされていました。

子どものハートケア支援(伊豆山キッズクラブ)

熱海市伊豆山キッズクラブ

休校中の伊豆山小学校児童と幼稚園児を対象に伊豆山小学校体育館にて「伊豆山キッズクラブ」を開催。

児童、幼児と保護者を対象とした遊びの場を提供し、子どもが元気になり、保護者も元気になって、その力で町内の大人たちを元気にするという期待を込めて支援を行っています。子どもも大人も楽しい時間を過ごすことによってレジリエンスを高めてもらおうという活動です。

参加されたお母さん:
「お友達と会うことが本当に減ってしまって。大人と遊んでいても、すぐに限界がくるんですよね・・・
今日はお友達やお兄さん先生ともたくさん遊べて、久しぶりにとても楽しそうにしていたので来てよかったです。
こうした機会を作っていただけるのは親にとっても本当に助かります。」

関連記事:伊豆山キッズクラブ ~地域のレジリエンスを高める~

いつも楽しみにしていた移動図書の運行もお休み、まだ生活再建も見通せない中で図書館の本も全て返しているという子ども達。
その話をうけ、8月は絵本専門士の方に選別していただいた絵本の貸し出しや読み聞かせも予定しています。

継続支援、生活困窮者、引きこもり支援

大きな災害は時に隠れていた問題が表に引き出されるきっかけともなります。
ライフラインが止まり、極限の状況で命をつなぐのは人の力であり心であることに気が付くことも少なくありません。

この1か月間、自治体の皆さんは傷ついた地域と住民を支え励まし続けてこられました。心配している世帯や住民が気になっていても、災害時は足を運んで様子を見る余裕がありません。在宅避難しているか、避難所へ移動しているか、困ったことはないか、そういった調査を含め私たちもサポートさせていただいています。

災害直後は気が張ってむしろ元気に見えていた方でも、時間がたつにつれて心身が弱まっていく方もいます。定期的に足を運び声をかけ続け、要支援者を発見した場合は福祉関係機関へつなぐ支援もこれから必要となってくることが予想されます。

災害支援では、時の経過とともに、支援のニーズが1日単位で急速に変化していくので、フレキシビリティのある支援が必要です。
オペレーション・ブレッシング・ジャパンは、ひとり1人の生活のニーズに応じた支援を行いながら、少しでも多くの被災者が一日も早く日常を取り戻すことができるよう、引き続き支援活動に取り組んでいきます。

皆さまの心温まるご支援を引き続きよろしくお願いいたします!

令和3年7月豪雨 熱海土砂災害支援活動に寄付する

熱海伊豆山での生活復興のため、切れ目のない支援のため、あなたのご支援が必要です!

▼令和3年7月豪雨支援寄付はこちら(クレジットカード、銀行振込、郵便振替)
 https://objapan.org/donation/donation-ob

▼郵便振替
 振込先口座 ゆうちょ銀行 当座 二二九店 135913
 口座記号番号 02260-8-135913
 オペレーション・ブレッシング・ジャパン
 (こちらの内容をご記入ください 1. お名前 2. フリガナ 3. メールアドレス 4. 郵便番号 5. ご住所 6. 電話番号)

▼銀行振込
 振込先口座 三井住友銀行 仙台支店 普通 2202482
 特定非営利活動法人 オペレーション・ブレッシング・ジャパン
 (こちらの内容をご記入ください 1. お名前 2. フリガナ 3. メールアドレス 4. 郵便番号 5. ご住所 6. 電話番号)

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活動レポート:https://objapan.org/category/reports/july-3-reiwa-torrential-rain/
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熱海市伊豆山地区の支援活動は下記パートナー団体の協力により実施しています(あいうえお順)。
一般社団法人クラッシュジャパン
社会福祉法人ミッションからしだね
特定非営利活動法人CWS Japan
日本国際飢餓対策機構(JIFH)
ACT japan フォーラム

オペレーション・ブレッシング・ジャパンは、社会課題の解決を組織第一の使命とし、被災地からの支援要請および支援ニーズに基づき活動する特定非営利活動法人です。45の日本の国際NGOが加盟するジャパン・プラットフォーム(JPF)が作成している「新型コロナウイルスの感染が懸念される状況におけるNPO等の災害対応ガイドライン」を遵守し支援活動を行っています。

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