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「自分の居場所どこ」大阪 |難民を孤立させない交流カフェの現場から

オペレーション・ブレッシング・ジャパンは「地域からだれも孤立させない社会」を目指し、災害支援や生活困窮者支援に取り組んでいます。
今回は、日本に逃れてきた難民や外国人移住者を支える大阪生野区での支援活動を、現場からの声と共にお届けします。

だれしもが「生きがい」を持てる地域にしたい

カトリック大阪大司教区社会活動センターシナピスが運営、OBJが助成協力した「シナピスカフェ」(※元おとしより食堂)は、地域の高齢者を難民がもてなすというユニークなカフェです。独居高齢者が多い地域で、お年寄りと難民が交流を深める機会を提供し、誰もが必要とされる居場所を作ろうという試みです。


出典:ABCテレビ

在留資格が取得できなかったり、仮放免という制度上働けない外国人を支援する活動をしているシナピス(カトリック大阪大司教区社会活動センター)。代表のビスカルドさんは、日本に存在する難民の厳しい現状について次のように訴えています。

「難民の人たちが置かれている状況は、元々脆弱です。彼らが弱いのではなく、弱い立場に置かされているのです。命からがら日本に逃れてきても、すぐシェルターに助けを求められるわけでも、就労先が見つかるわけでもありません。
そんな彼らが望んでいるのは、『施しをうけるのではなく仕事をしたい』『誰かの役に立ちたい』という強い想い。

彼らが孤独に押しつぶされそうになっていたり、食料品の受け取りを躊躇する姿に、人間の尊厳がつぶされていると痛感しました。今回のプロジェクトを通して、彼らに地域に貢献し、生きがいを持ってもらう居場所づくりを考えたんです。」

迫害から逃れ出会った「自分の居場所」


出典:ABCテレビ

シナピスカフェでひときわ熱心にお茶を振舞っているのは、イラン出身のアッバス・ヤズダニさん(34)。政治的な迫害で命を狙われ、各国を転々とした後、4年前に日本にたどり着きました。

関西空港で難民を訴えるもビザがなく、その場で拘束。入国管理局に2年8カ月に渡り収容され、去年1月に仮放免になりました。仮放免中は仕事ができず、生活もままなりません。アッバスさんは、難民支援団体から補助を受けてアパートに暮らしながら、仕事ができない悔しさと見知らぬ国での孤独に耐えていました。

そんななかで、昨年12月にオープンしたシナピスカフェ。コロナウイルス感染拡大のため何度も休止を余儀なくされましたが、それでも少しずつカフェの存在が地域に広まり、お年寄りが顔を出してくれるようになりました。

カフェは仲よく和気あいあいとした雰囲気。自分たちで栽培したミントティーやオリジナルのドリンクを振舞い、アッバスさんをはじめとした外国人の方が、週1回のこの集いを楽しみに意気込んで参加しているのがわかります。

ある日、カフェの常連のおばあさんが、大学生のお孫さんを連れてやってきました。英語が好きだという彼は、イランやベトナム、アフリカ諸国等、多くの国籍と文化を持った人々が集うカフェに「近所にこんな場所があったの?!」とビックリ。
自分がまだ見たことも聞いたこともない文化や話に触れ、彼女はすっかりシナピスカフェがお気に入りの場所となりました。アッバスさんは年齢が近いことから、冗談を言ったり他愛ない話ができる友達ような存在に。

「日本語の勉強にもなるし、自分の文化に興味を持ってくれるうれしい。もっと色んな話がしたい。」自分の母国や文化について話合う時間は、アッバスさんにとって週に一度の何より楽しみなりました。

アッバスさんは現在も難民申請の審査中で、いつ申請許可が降りるのか、その後の暮らしはどうなるのかまったくわかりません。

しかし、彼の境遇を理解し、家族のように自分を受け入れてくれる場所がある。そしてこのカフェを通じてお茶を出したりだれかの話に耳を傾けることで、笑顔になってくれる人々がいる。そのふれあいが、今のアッバスさんの心を支え続けています。

加速する超高齢化社会を支えるきっかけにも

このシナピスカフェの取り組みは、今年3月にABC報道テレビでも紹介されました。
その直後から、ご寄付やボランティアの申し出、ご自身も寂しい思いをしている、シナピスホームの近くに引っ越したいなどの電話が次々と寄せられています。

将来的には、独居高齢者が多い近隣で、電球の付け替えや清掃、買い物の付き添いなど、介護保険ではまかなえない生活のちょっとした困りごとをお手伝いしながら、さらに外国人が地域になじんでいくことを目指しています。
アッバスさんもカフェに参加しながら、近所の独居高齢者のために自分が力になれることをしたいと期待に胸を膨らませています。
「重いお米を買いに行ったり、掃除をしたりして助けたい。誰かの役に立ちたい。」

独居高齢者であったり難民であったり、どちらかというと地域の中で「見えない存在」だとされてきた人たちが出会い、カフェを通して居場所と役割を見出していく。
互いの存在が励ましとなり、生きがいになっていく。その新しい支え合いのモデルが、これからさらに加速化する高齢化社会を乗り越える鍵となっていくことと思います。

皆さまからのご寄付によりこうした住民同士のつながりの場として、お互いがお互いを見守り支え合えるような活動を継続することができることを心から感謝致します。
引き続き皆様のご支援をお願い致します。

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ABCテレビ報道映像はこちらからご覧いただけます。

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