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【福島】これまでと違う夏休み 短くても最高の思い出を

緊急事態宣言が解除されてから、もう間もなく3カ月。
子どもたちにとって夏休みは、大切な人たちと同じ空間、体験を共有し、大切な思い出を作るかけがえのない機会です。
しかし、コロナウイルスはその尊い日常を奪っていきました。

当事者である子どもたちは、今どのような想いでいるのでしょうか。そして、そんな子どもたちを大人はどのように支えているのでしょうか。

当団体の南相馬復興コミュニティスペースで、地域の子どもの学童保育を担う「ブレッシングクラブ」の模様をお伝えします。

失われた『当たり前』の日常

オペレーション・ブレッシング・ジャパンは、原発事故によって地域のつながりが分断された福島県南相馬市で、復興コミュニティスペースを構えコミュニティ支援を実施してきました。
そして2018年からは、放課後児童保育「ブレッシングクラブ」を開始し、市内4つの小学校の子どもたちの託児を行っています。

いっしょに宿題や工作をしたり、音楽の時間に歌を歌ったり…私たちは様々な活動を通じて日々子どもたちの成長を見守ってきました。
時にケンカし、涙を流し、怒ったり笑ったりする子どもたちのにぎやかな日常が、開館以来ずっと繰り広げられてきました。

そんな当たり前の日常を、突然一変させたコロナ。
2020年3月末からブレッシングクラブは臨時休館に。その後も学校の休校に伴って休館を延長し続けましたが、保護者の方から「子どもの大切な居場所だから行かせてあげたい」「家でひとりでいる時間が増えて、子どもが精神的に不安定になっている」という声をいくつももらいました。

そこでスタッフで感染予防対策について徹底的に話し合い、換気の徹底や3密の防止、児童の体温管理などを行うことを決め、学校再開と共にクラブのOPENに踏み切りました。

戸村(学童スタッフ):「少しでも感染のリスクを減らしたい保護者もいらっしゃるだろうから、クラブを再開しても子どもたちはごく少数しか来ないのではないかと、少々不安に思っていたところはありました。
しかし実際に再開してみると、『一日中家で子どもを見ていたので精神的に疲れてしまって…また預けることができて本当に助かりました』『子どもも「またクラブに行ける!」と喜んでます』といった保護者のお声をたくさんいただいて、いかにこの場所が両者にとって特別な空間だったのかを痛感しました。
学校や家庭とは違う第3の居場所が、皆さんの心の安定や楽しみに繋がっていたんだなと…再開に踏み切るまでスタッフで何度も話し合い、たくさん悩みましたが、この選択をして本当によかったと思っています。」

夏休みに最高の体験を届けたい

例年より短い夏休みが1日、福島県内で本格的にスタートしました。
本来なら楽しみでしかたがないはずの夏休み。しかし、授業が遅れないよう多めに出された宿題と格闘し、移動自粛で遠出のお出かけもできない子どもたちを見て、学童担当のスタッフ達は考えました。
「学校の行事も次々と中止になってしまっている今だからこそ、ここでできる最高の体験をさせてあげたい…」
「一年に一度しかない夏休みを、楽しい思い出でいっぱいにできないか」
その思いで一致したスタッフはミーティングを重ね、今週17日からの一週間、「学童保育夏休みスペシャル」を開催することにしました。

特別お預かりでは、陶芸教室、クラフト体験、アートといったプログラムが盛りだくさん!
ブレッシングクラブ夏休みSP2020

粘土で鉛筆立てづくり

レザークラフトで完成したポーチ


そのプログラムの中で起こった、印象深いストーリーをご紹介します。

Rちゃんの涙

それは夏休みスペシャル3日目。講師の臨床心理士、小野寺良枝先生によるアートプログラム、『新聞紙工作 パイナップルを作ろう!』が行われた日のこと。
針金に新聞紙を巻き付けて、カラフルなテープで飾り付けをするアートクラフトに、いつも通り子どもたちも夢中な様子。

工作時間が終わると、小野寺先生は完成した作品を手に取り、作った子一人ひとりに向けて素晴らしい点を発表してくれました。
褒められた子どもたちは、ちょっと目線を外してそわそわしたりもじもじしたり…みな照れくさそうでいて、とってもとっても嬉しそう。

そして小野寺先生が、Rちゃんの作品を手にして素晴らしいところを一つひとつ発表していた時のこと。

戸村:「Rちゃんが突然目を潤ませて、私のもとに駆け寄ってきたんです。
『こんな風にほめられたの初めて。なんだか不思議な気持ち…』と、少し戸惑っているような様子でした。
『それが”うれしい”って気持ちなんだよ。Rちゃんのたくさんの良いところを教えてもらって、うれしかったんだよね」と私が伝えると、Rちゃんはまた涙を流してハグしてきました。

その涙には、純粋に褒めてもらえたことのうれしさもそうですし、自分自身の存在を肯定されたようなうれしさもあったのではないかなと思います。
そうしたら、私まで温かい気持ちになりました。』

小野寺先生は、最後にスタッフに次のような言葉を残してくださいました。

「子どもたちのダメなところを探すのではなく、良いところを探して、ちゃんと言葉で伝えてあげることが大切です。そして、一人ひとりの存在に感謝すること。
『あなたがいてくれてありがとう』という気持ちを、直接伝えることです。そうするとで、子どもたちの『自分自身を大切にする心』が育っていきます。」

今回のコロナウイルスで生活が一変し、子どもたちの気持ちも揺れ動きやすくなっている今だからこそ、子どもたちを励ますことが必要性を改めて教えられました。

戸村:「単にいっしょにゲームをしたり工作をしたりして『楽しかった!』で終わるのではなく、『僕たち(私たち)は愛されてるんだ、尊い存在なんだ』と実感して帰ってもらうこと。それがこのブレッシングクラブを行う目的です。

子どもたちは大人と違って、自分の気持ちをうまく言葉にすることができません。大人から見ると、時に「困った行動」として不安やストレスが現れてくることもあります。
言葉が荒くなったり、落ち着きがなくなったり、ボーッとしたりすることもあります。

だからこそ私たちは、そうした変化を見逃さず、子どもたちの気持ちをありのままに受け止める存在でありたいです。つらいことはつらい、悲しい時は悲しい。ここブレッシングクラブは、自分の気持ちをそのまま打ち明けていい安全な場所です。
そうして自分が認められ、肯定される体験をたくさん積むことが、子どもたちの生きる力に繋がっていくと信じています。」

子どもたちの健やかな成長が、コロナによって妨げられてしまうことがないように。
学童保育夏休みスペシャルも後半に差し掛かりましたが、子どもたちの思い出づくりはまだまだ続きます。

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