ソーシャルアクションプロジェクト|「戻れる場所」が、若者の一歩を支える
社会的養護を経験した若者たちと育てる、つながりと主体性
7月18日、仙台のBlessing Roomに、若者たちが集まりました。
この日の目的は、8月18日に仙台市・勾当台公園で開催する「青空会イキイキフェスタ」の準備。社会的養護を経験した若者たちが、自分たちのブースを出す予定です。男子の参加者は男性メンターと一緒に「お菓子釣り」を準備し、女子の参加者は女性メンターとともにアート企画を考えました。
誰かに楽しんでもらうには、どうしたらいいだろう。
自分には何ができるだろう。
一つの目的に向かって意見を出し、役割を持ち、仲間やメンターと一緒に準備を進めます。

来場する子どもたちに楽しんでもらえるよう、色とりどりの色紙を使って大きな花火を制作しました。
活動の後は、みんなでカレーを囲みました。仕事のこと、生活のこと、人間関係のこと。食卓を囲みながら、自然とそれぞれの近況や悩みも語られていきます。
一緒に作業すること。
食卓を囲むこと。
自分の意見を伝えること。
誰かに喜んでもらうこと。
困っていることを話すこと。
一つひとつは何気ない日常のように見えるかもしれません。
けれど、その積み重ねの中に、若者が社会の中で自分の役割を持ち、人と協力し、自分の力を誰かのために生かしていくための大切な経験があります。
安心して戻れる場所が、次の一歩につながる
OBJが社会的養護を経験した若者たちとの関わりで大切にしているのが、「安全基地」という考え方です。
心理学の愛着理論で使われる「安全基地」とは、安心できる関係を土台として、そこから外の世界へ出て、新しいことに挑戦するための拠点を意味します。
困ったときには戻って相談できる。
自分の人生について、自分で考え、選ぶことができる。
必要に応じて、人や制度につながることができる。
そして、また自分の生活へ戻っていく。
そんな往復を支えられる関係です。

メンターと一緒に手を動かし、一つのものをつくる。こうした何気ない時間を重ねることも、困ったときに安心して相談できる関係を育てる大切な時間です。
多くの場合、こうした役割を担うのは家族です。社会へ出てつまずいたときに相談する。一時的に戻って気持ちや生活を立て直し、また歩き出す。しかし、社会的養護を経験した若者の中には、このような「安心して戻れる関係」を持つことが難しい人もいます。
相談窓口や支援制度があることも重要です。同時に、
「失敗した自分でも相談していい」
「しばらく連絡していなくても、また戻っていい」
と思える人との関係があることも、若者が社会の中で歩き続けるための大切な支えになります。
制度があることと、実際に相談できる関係があることは、必ずしも同じではありません。だからこそ私たちは、何か問題が起きたときだけではなく、普段から若者たちとのつながりを育てています。
相談できることも、「自立する力」のひとつ
社会的養護を経験した若者たちは、18歳前後から、自分の生活について多くのことを自分で担うようになります。
住まいを決める。
仕事を探す。
生活費を管理する。
人間関係の問題に向き合う。
困ったときには相談先を探す。
そこで必要になるのは、何を自分で担い、どんなときに人へ相談するのか。どのように助けを借り、周囲との関係を調整するのか。それを自分で考え、選択できることも社会的自立の大切な力です。
必要なときに相談し、人を頼り、適切な社会資源につながる。その経験を重ねるためにも、普段から安心して話せる関係があることが大切です。
誰かに喜んでもらう経験も、その循環の中に
今回、若者たちが準備しているイキイキフェスタのブースも、この循環の一つです。若者たちは、自分の意見を出し、仲間と協力し、それぞれの得意なことや経験を生かしながら、「来てくれる人に楽しんでもらう」ために準備しています。
人は、自分の行動によって誰かが喜んでくれたとき、
「自分にも、誰かに渡せるものがある」
と感じることができます。

若者とメンターが一緒に『お菓子釣り』を準備。当日の様子を想像しながら、仕掛けや遊び方を考えました。

完成したお菓子釣りを、子どもたちと一緒に試してみました。実際に楽しんでもらうことで、準備してきたものが誰かの笑顔につながる経験に。
自分自身も人に相談し、助けを受けながら、自分の持っている力を誰かのためにも使ってみる。支える、支えられるという役割は、一方向に固定されたものではありません。誰もが時には支えを必要とし、また別の場面では誰かの力になることができます。
そうした経験を重ねながら、自分の人生を歩き、周囲の人とも支え合って生きていく。
それもまた、私たちが若者たちとともに育てていきたい「主体性」の一つです。
8月18日のイキイキフェスタでは、今回準備した企画を若者たち自身が来場者へ届けます。準備してきたことが、当日どんな出会いや経験につながるのでしょうか。その様子も、次回の活動レポートでお伝えします。
何も起きていない時間も、つながりを支える時間
一緒に活動する。
食卓を囲む。
近況を聞く。
しばらく会わない時間があっても、またつながれる。
相談を受け、必要な人や制度へつなぐ。
つまずいたときには、一緒に次の一歩を考える。
一見すると「何も起きていない時間」も含めて関係を続けることが、いざというときに「相談してみよう」と思える土台になります。
皆さまからのご寄付は、イベントや物品だけでなく、こうした日常のつながりを育て、保ち続ける活動を支えています。
若者が自分で選び、社会へ踏み出し、つまずいたときには戻り、もう一度歩き始める。そしていつか、その経験や力が、周囲の誰かにも手渡されていく。
そんな支え合いの循環を地域の中に育てていくために、ご協力をお願いいたします。