[スタッフレポート]「愛してみる。その中で知る。」~社会的養護を経験した若者たちと考えた、「自立」とは
OBJでは2024年から、宮城県仙台市で社会的養護を経験した若者たちへの支援活動を続けています。
社会的養護とは、さまざまな事情により家庭で生活することが難しい子どもたちを、児童養護施設や里親家庭、ファミリーホームなどで育てる仕組みです。
子どもたちは18歳(進学などの場合は22歳)を迎えると、自立に向けて新たな一歩を踏み出します。しかし、制度の支援が終わったからといって、人生の課題が終わるわけではありません。
進学、就職、一人暮らし、人間関係、お金の管理。
多くの若者が、支えが少なくなる中で、大きな責任と選択を抱えながら歩み始めます。
私たちが日頃関わる中で感じるのは、「誰かに頼る」という感覚を持ちにくい若者が少なくないということです。
「自分で何とかしなければならない。」
そんな思いは、生きる力でもあります。しかし一方で、困難を一人で抱え込み、相談できないまま心が折れてしまうこともあります。
だからこそOBJでは、安心して語り合える仲間や、信頼できる大人とのつながりを育む場を大切にしています。
「自立」とは、一人で生きることではない

2026年6月20日、社会福祉法人三愛学園 理事長の高瀬一使途さんを講師に迎え、「自立した生き方とは何か」をテーマにお話を伺いました。
三愛学園は1976年に創設された児童養護施設です。
「神を愛し、人を愛し、土を愛す」という理念のもと、「思いやりのある子」を養育目標として、長年にわたり子どもたちの成長を支えてきました。
高瀬さんは、多くの子どもたちや若者の歩みを見守る中で、自立には四つの側面があると話してくださいました。
- 身体的自立
- 経済的自立
- 精神的自立
- 社会的自立
中でも印象的だったのは、「精神的自立」についてのお話です。
精神的自立とは、自分の意思と価値観に基づいて判断し、行動できること。他人の評価や期待だけで生きるのではなく、自分で考え、自分で選び、その結果に責任を持つことです。
高瀬さんは、社会的養護を経験した若者たちの中には、この部分で苦労する人が少なくないと話されました。
幼い頃から環境に合わせることを求められたり、大人の判断によって生活が決められたりする経験が積み重なることで、「自分は何を望んでいるのか」「どう生きたいのか」を考える機会が十分に持てなかった場合もあります。
そのため、社会に出て壁にぶつかったとき、自分を責めたり、進む方向を見失ったりしてしまうことがあります。
しかし高瀬さんは、 自立とは「一人で生きることではない」 と語りました。
必要な時に助けを求め、支えを受けながら、自分らしく生きること。それが本当の意味での自立なのだと、参加者へ温かく語りかけてくださいました。
若者たちの声
「学校にも行きたくなくて、勉強もどんどん遅れていきました。でもファミリーホームの里親さんが支えてくれました。それがなかったら、高卒認定試験まで頑張れなかったと思います。本当に感謝しています。」(参加した青年の一人)
「仕事でつまずいて退職しました。自分が何をしたいのかも分からなくなってしまって、とにかく誰かの話を聞いてみたくて来ました。でも、みんなが温かく迎えてくれてうれしかったです。」(初めて参加した30代の女性)

安心して話せる場所があり、同じような経験を持つ仲間や信頼できる大人と出会えること。そのこと自体が、自立への大きな支えになることを改めて感じる時間となりました。
「愛してみる。その中で知る。」
会の終了後、高瀬さんは、スタッフにこんな言葉を残してくださいました。
「社会的養護の中で育った子どもたちの多くは、なぜ自分が親元で育てられなかったのか、なぜ家族と離れて暮らさなければならなかったのか、その答えを探し続けています。そして心のどこかで、『自分が悪かったからではないか』と思ってしまうことがあるのです。」
その言葉は、私たちの胸にも深く残りました。
誰もが「愛されたい」と願いっています。それは弱さではなく、人として自然な願いです。

OBJは、社会的養護を経験した若者たちが、安心してつながれる人や地域と出会い、自分らしく歩み続けられるよう、これからも一人ひとりに寄り添いながら、この活動を続けていきます。