令和8年熊本地震|洗濯する、好きなものを食べる――高齢者の日常を支えた支援
衣類を洗い、清潔な環境で過ごすこと。
自分の好きなものを、誰かと一緒に味わうこと。
噛む力や飲み込む力に合った食事を、安心して口にすること。
どれも日々の暮らしの一部ですが、災害によって物資の供給や店舗の営業が止まると、続けることが難しくなります。
熊本県内の3つの高齢者施設から、その後の様子が寄せられました。皆さまから託されたご寄付が、それぞれの施設で暮らす方々の食事や衛生、安全を支えています。
店舗が再開しない中、暮らしに欠かせない日用品を
宇城市の住宅型有料老人ホーム「なごやかハウス」では、33名の利用者が暮らしています。水道などのライフラインはようやく復旧していましたが、周辺では営業を再開していない店舗が多く、施設で必要な日用品を十分に調達できない状況が続いていました。
必要とされていたのは、洗濯洗剤、衣類用・台所用の漂白剤、大小のごみ袋などです。災害支援というと、水や食料が思い浮かびます。しかし、大勢の方が暮らす施設では、毎日の洗濯や清掃、ごみの処理を続けるための日用品も欠かせません。
皆さまからのご寄付により、施設から希望のあった品をそろえ、無事に届けることができました。
職員の方からは、
「この度は物資をいただき、本当にありがとうございました」
との言葉が寄せられています。
ライフラインが戻っても、必要な品を地域で購入できなければ、日常生活が元に戻ったとはいえません。届いた洗剤やごみ袋は、33名の利用者が清潔な環境で過ごすために役立てられています。

店舗の休業が続くなか、33名の利用者の清潔な暮らしを支える洗剤やごみ袋などの日用品をお届けしました。
久しぶりのパンとラーメンに、笑顔が戻った
氷川町の介護老人保健施設「八祥苑」は、福祉避難所として被災した高齢者を受け入れています。本来75床の施設で過ごしているのは、定員を10名上回る85名。受け入れ人数が増えたことで、食料や飲料に加え、緊急入所した方が使用する車椅子も不足していました。
施設長からは、
「特に車椅子などは高価であり、緊急避難で来られた方には我慢をいただく状況でした」
と伺っています。
皆さまからのご支援によって、麦茶、パン、カップ麺、車椅子3台などを用意しました。
パンを召し上がった日のことを、施設の方は次のように伝えてくださいました。
「入居者様は甘いものが大好きで、大喜びでした。被災後、久しぶりの笑顔で、職員も癒されました」
別の日には、届いたカップ麺を使って「ラーメンパーティー」を開催。久しぶりのラーメンをおかわりする方もおり、食卓には笑顔が広がったそうです。
食料は、空腹を満たすだけのものではありません。好きなものを味わい、周囲の人と楽しい時間を過ごすことが、避難生活のなかで失われていた日常を取り戻すひとときになりました。その笑顔は、被災後の対応を続けてきた職員の心も支えています。
車椅子3台も、緊急入所した方々の移動を助け、転倒の危険を減らすために活用されています。
その後、施設からは、受け入れ人数の増加に伴う看護現場の負担についても相談が寄せられました。9月17日に看護職員が現地に入り、翌18日から支援を開始しています。 その後に生じた困りごとにも耳を傾けながら、支援をつないでいます。

皆さまからのご寄付で届けた車椅子が、緊急入所された利用者の安全な移動と日々の生活を支えています。

定員を超えて被災した高齢者を受け入れる八祥苑へ、食料や飲料、車椅子などをお届けしました。

久しぶりのパンやラーメンを囲み、利用者の皆さんに笑顔が広がりました。
「食料」ではなく、その方が食べられるものを
氷川町の有料老人ホーム「かぜの杜」では、24名の利用者が暮らしています。施設の井戸から水は出ていたものの、砂が混じり飲用などには使えない状態で、職員が氷川町役場まで水を取りに行きながら日々の生活を支えていました。
断水時には洗い物を減らす必要があるため、紙コップや使い捨て容器も不足。なかでも深刻だったのが、高齢の利用者に提供する食事です。
一般的な非常食は、誰もが同じように食べられるわけではありません。高齢者のなかには、噛む力や飲み込む力が弱く、食事の硬さを調整する必要がある方もいます。
ところが、普段使っていた高齢者向けの介護食が手に入りにくくなり、施設では一時的に乳児用の食品も代用しながら、食事を確保していました。
そこで、施設職員から利用者の状態を一人ひとり伺い、「かまなくてよい」「舌でつぶせる」など、食べる力に合った複数の介護食を選定。麦茶、紙コップ、使い捨てボウル、紙製の先割れスプーン300本などもあわせてお届けしました。
届いた介護食は、実際に利用者の食事として活用されています。
災害時に必要なのは、単に「食料があること」だけではありません。その方が安全に食べられ、必要な栄養を取れることまで考える必要があります。その後も水の状況を確認し、9月16日には飲料水20セットを施設へお届けすることができました。

噛む力や飲み込む力に合わせて選んだ介護食が、毎日の食事を支えています。

災害時にも、その方が安心して食べられる食事を。利用者の状態に合った介護食をお届けしました。

介護食に加え、断水下で洗い物を減らす紙コップや使い捨て容器、ラップなどを用意しました。
物資の先にある、一人ひとりの暮らしへ
洗剤やごみ袋が、清潔な生活環境を守る。
パンやラーメンが、久しぶりの笑顔を生む。
車椅子が、移動の安全を支える。
食べる力に合った介護食が、毎日の食事を守る。
皆さまから託されたご寄付は、物資として施設に届くだけでなく、一人ひとりの生活のなかで使われ、安心できる時間へとつながっています。
被災後の必要は、地域や施設によって異なり、復旧の段階とともに変化します。自ら支援を求めることが難しい高齢者の暮らしにも必要な支えが届くよう、日頃の生活を知る施設職員の声を伺い、その時々の状況に合った支援を続けてまいります。
熊本地震支援へ温かいご寄付をお寄せくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。