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“災害多発時代に私たちができること”「市民ソーシャルワーカー育成プロジェクト」インタビュー第3弾

インタビュー第3弾/国際人道支援団体CWSジャパン 海外事業部担当 牧由希子さん

この度オペレーション・ブレッシング・ジャパン(OBJ)、発災時市民の力で困っている人を助ける仕組み「市民ソーシャルワーク」、それを担う「市民ソーシャルワーカー」を育成するプロジェクトを立ち上げました。

「市民ソーシャルワーカー育成プロジェクト特集」では、これまでプロジェクト立ち上げに携わった方々2名のインタビューを紹介してきました。
連載最後となるインタビュー第3弾は、CWSジャパンの海外事業部スタッフとして活躍されている牧さんのお話をご紹介いたします。
災害時にはどのような問題が発生するのか、また市民としてできることは何かについて、災害現場での体験をもとに語っていただきました。

Q.昨年の台風19号災害で、OBJと共に千葉の被災地支援に入られた牧さん。 普段はどのような活動に携わっていらっしゃいますか?
牧:アフガニスタンとミャンマーの防災と国内の災害支援事業を主に担当しています。
活動の一例をあげますと、アフガニスタンでは、洪水浸水区域や地滑り危険地を示す、日本ではおなじみの「ハザードマップ」が市民の間で普及していません。
事前に災害警戒区域に関する情報を知ることができれば、より多くの住民の命が救われますが、アフガニスタンでは普及していないのが現状です。

私が担当している事業では、ハザードマップ作成技術を持つ日本のコンサルタント会社とパートナーシップを結び、現地スタッフや行政関係者が自分たちで地域のハザードマップを作れるようにする技術支援を行っています。
そして完成したマップを使ってワークショップを開いたりして、自治体・学校・家庭に広めていくんです。

Q.自分たちの村を、自分たちの力で守れるような仕組みづくりをされているのですね。?
牧:はい。単にこちらで作ったものを渡しても、現地の防災力は培われませんし、住民の防災意識も高まりません。
災害が起きたとき、自分たちの住む地域にはどこにどのような危険があるのか、またどのような行動をとるべきなのか、その発想を持ってもらうことが、被害を未然に防ぐ大きな一歩になると思います。

Q.『防災』は、この『市民ソーシャルワーク』にも共通する重要なテーマですね。
このガイドブックの制作を提案したのは牧さんだとお聞きしましたが、何か制作を考えるきっかけはあったのでしょうか?


牧:今回の台風19号災害で千葉に入って、被災者の方々とダイレクトにかかわったことが大きなきっかけになりました。
被災地支援には今までもかかわったことはありましたが、毎週現場(館山)に足を運んで被災者の方と密接に関わる中で重要なことに初めて気づかされました。

災害が起きたときは、社協(社会福祉協議会)に「○○で困っているから助けてほしい」という住民からの要請が一気に入ります。
私たちは、その要請をもとに社協が作成したニーズ票を見ながら、一軒一軒お宅を訪問し、依頼のあった作業を行いました。

しかし、本当に生活に困窮している人のところへは、なかなかたどり着けませんでした。
自分で支援を要請することができない人の困りごとは、ほとんど表面化してこないんです。「助けて」という声を上げられないから、そこで助けを必要としている人がいるなんてだれも気付きません。
そうして支援の狭間から零れ落ちてしまった人がいる厳しい現実を、今回の千葉での支援を通して知りました。

Q.困りごとを抱えているのに、それが周囲に伝わらない…いわば社会から孤立してしまっているような状態ですね。
牧:そうですね。あるお宅を訪問した時は、家の中がゴミ屋敷状態で、ご主人が認知症でした。
奥さんを介護しながら、白内障で目が見えない中生活していて、「これじゃあ自分で助けを呼べるわけがない」と思ったんです。
当たり前ですが、災害が起きる前から手助けが必要なお宅は存在します。
このお宅のように病気を抱えていたり、障がいをもっていて体が不自由だったり…。災害が起きると、それが命にかかわる問題となって迫ってくるんです。

今回一緒に活動したミッションからしだねの精神保健福祉士である武山さんは、そうした助けが必要な方々のところへ積極的に出向いていって、一体どんな問題を抱えているのか、一人ひとりの相談に乗っていました。
そのソーシャルワークの働きが、被災地ではもっともっと必要だと肌で感じたのです。
市民SW 武山さん3
Q.それでガイドブックを制作しようということになったんですね。
牧:はい。支援活動中は毎日のように、チームでミーティングを行っていました。
その話し合いの中で、「現場で活かされているソーシャルワークのスキルを、もっとたくさんの人に広めていこう」いう結論に至ったんです。

私たち一般市民は専門職ではありませんから、プロの働きはできません。
ですが、それでもできることがたくさんあるということを、このガイドブックを通して多くの人に知って、参加していただきたいんです。

この本では、ちょっとした困りごとを住民同士で解決したり、地域のニーズを専門機関につないだりできるような情報を紹介しています。実際に被災地の現場で起きた事例をベースに、専門職でなくても私たち市民ができることについてまとめました。
きっと、「もしもの時だれかの力になりたい」と願っている人の助けになると思います。

Q.市民ソーシャルワークの輪が、この本を通してどんどん広がっていくといいですね。
牧:そうですね。災害が起きたら、とにかくたくさんの人力が必要になります。
災害はいつどこで発生するか誰にも予測できませんから、今から住民同士が支え合っていく仕組みづくりに取り組んでいく必要があります。
その動きが活発化すれば、これからの災害支援でより多くの生活困窮者を救っていくことができるのではないでしょうか。

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