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【熱海市土砂災害】グリーフサポートの立場から ~キッズクラブとおしゃべりドライブに参加して~

グリーフサポーター 讃井美帆



熱海の土石流災害から二ヶ月目に入る8月4日、初めて伊豆山地区へ入り午前中の伊豆山キッズクラブに、そして翌5日はおしゃべりドライブに参加させて頂く機会を得ました。

最近はどこでもそうですが、特にカウンセリングの場でも欠かせないのは何より「安心・安全」であることです。既に住民の主な方々とOBJスタッフの関係性ができていること、町内会と協力体制にあることで住人からの信頼は得ることができていると感じ取れました。

ここには主にグリーフサポートの視点から感じたことを挙げます。

伊豆山キッズクラブ

・ルールを決めておくのは大切なこと

「安心・安全」を提供するため、人を傷つけない、ケンカをしないなどのルール設定は大切なことです。初めにそれが行われていたのは重要で今後も継続が必要です。(リマインドのために、ルールを一つずつ後に続けて子どもに言ってもらうのも良いかもしれません)

グリーフケア 伊豆山キッズクラブ

・子どもの笑顔は親の幸せ=親の癒しの時間に

初参加の姉妹もおられ、保護者は特に子どもたち同士の関係も気になっていた印象で子どもたちが体育館を動き回るとき、保護者はほぼ常に身体ごとずっと我が子を追っていました。

場を提供する側には子どもが遊んでいる間に保護者の胸の内を吐露して楽に…という思いもありますが、まず親が「安心」して子どもを遊ばせられるという状況になければ意識は常に子どもにいき、自分の話をしようという気にもなれません。

今回無邪気にはしゃぐ子どもの様子を見ている保護者は全員が笑顔で「母の顔」になっており、私はそこに「何気ない日常」を感じました。また、遊ぶ子どもの様子をスマホで撮影する方を見たときに、それはまるで遠足や旅行先で親が思い出のために写真を撮っているようなシーンのようで、それだけでもこのイベントを企画した意義は大いにあると言えます。

この時間は災害という非日常の中にあって嫌なことから離れ、ただ広い場所で思い切り遊び回っている我が子を見つめるという普段私たちが意識していない、けれども失って初めて気付かされる「なんでもないひととき」が持てるものであり、参加者にとっては一瞬だけでも現実から離れた癒しの時間になっていました。

・辛い経験を語ることだけがグリーフケアではない

多くの日本人は自分の感情を認識することに不慣れで、喪失体験に伴う様々な反応に特別にフォーカスすることもしません。でも無意識でも被災した人々には間違いなく喪失体験に伴う何かしらの心の反応や身体の反応が起こっているはずです。

ただでさえコロナで失われていた日常に追い打ちをかけるように起こった土石流災害の中で、遊んでいる子どもを見つめる時間は保護者にとって癒しの時間にもなっていました。

土石流で亡くなられた方のことで涙が止まらないと話される保護者がいると知りその方とおしする機会があればと思っていましたが、複数の保護者がいる中で位置的にお隣に行くのは難しい状況でもありました。

そして思い切り遊んでいる子どもを笑顔で見守る姿を見て、形は違えどそこに「失われた日常」が一瞬だったとしても戻っていた様子でしたので、敢えて悲しみを表出して頂く場を設けるよりこの時は保護者が子どもの笑顔を見て「安心」することの方が大切だと判断。

「失われた日常」を取り戻す体験も立派なグリーフケアのひとつです。再び現実に戻る事実があり、そこで確かに寂しさを感じさせることにはなりますが、人生は大小ある喪失の連続であり人は日々それを体験しながらレジリエンス*を高めていっているのです。

おしゃべりドライブ

・隣町に行くだけでも大きなリフレッシュ

熱海 真鶴 おしゃべりドライブ

行先は車でわずか20分程度の場所でしたが、道中みなさん異口同音に「熱海を出るのは久しぶり」と喜んでおられました。県境ということもあり、熱海市を出るということだけでなく神奈川県に行けたということも外出する機会のない方にとってはかなり新鮮で、被災後の変わり映えのない生活からの相当な気分転換になっていたようです。今後も継続して企画することは、参加者が被災生活を忘れてときを過ごすケアの機会になります。

・お互いの存在がレジリエンスを高める

会話から、被災後初めて会う方々もおられたことが感じ取れました。そして乗車して間もなくは、土石流で流された方の中に直前まで良くして下さっていた方がおられたことなど亡き人を悼む会話があり、それからが久しぶりに熱海を出ることや日常生活へと会話が移行していきました。

グリーフケア

住人の取りまとめの方も「楽しむこと」を目的としておられたので、特に何もなければわざわざ被災した状況や気持ちを尋ねるようなことはしません
不参加の中には「そんな気分になれない」という方もおられたように、グリーフは本当に個別的なもので正解や不正解と分類されるものではありません。その人がそう感じたのならそれが「事実」であり、それが尊重されるべきなのです。

熱海おしゃべりドライブ グリーフケア

気心知れたメンバーで会って同じ空間で時を過ごす。災害時はこれが突然絶たれ、当たり前の日常がなくなります。ご本人たちで全てをセッティングすることは難しいかつての日常の場作りを、車を準備して提供できたことは外部ができる大きな力の一つです。

被災したことや、よく知る方々が亡くなりまだ見つからない方もおられること。お話しくださればもちろん私たちはお聞きしますし外部からの専門家が話を聞くことも大切ですが、それができなくとも住人の方々がこれまで日常生活でやって来た「お互いがコミュニケーションの中で支え合う」という基本的な場をこのように企画・提供することは、十分に被災者のレジリエンスを高めることに一役買っていると思います。

グリーフサポーター 讃井美帆さんは
上智大学グリーフケア研究所で訓練を受け、コロナウィルスワクチンとPCRを受けて参加


*レジリエンス
さまざまな災害や危機に対して事前にリスクを把握、軽減し、ひとたび災害が発生すれば適切に対処し、逆境から立ち上がる復元力、回復力のこと。
災害が発生した際には自らの力で立ち上がることができるよう、このレジリエンスを強化する支援を実施していきます。

熱海土砂災害・生活復旧支援へご協力をお願いします!

▼令和3年7月豪雨支援寄付はこちら(クレジットカード、銀行振込、郵便振替)
 https://objapan.org/donation/donation-ob

▼郵便振替
 振込先口座 ゆうちょ銀行 当座 二二九店 135913
 口座記号番号 02260-8-135913
 オペレーション・ブレッシング・ジャパン
 (こちらの内容をご記入ください 1. お名前 2. フリガナ 3. メールアドレス 4. 郵便番号 5. ご住所 6. 電話番号)

▼銀行振込
 振込先口座 三井住友銀行 仙台支店 普通 2202482
 特定非営利活動法人 オペレーション・ブレッシング・ジャパン
 (こちらの内容をご記入ください 1. お名前 2. フリガナ 3. メールアドレス 4. 郵便番号 5. ご住所 6. 電話番号)

熱海市伊豆山地区の支援活動は下記パートナー団体の協力により実施しています(あいうえお順)。
一般社団法人クラッシュジャパン
社会福祉法人ミッションからしだね
特定非営利活動法人CWS Japan
日本国際飢餓対策機構(JIFH)
ACT japan フォーラム

オペレーション・ブレッシング・ジャパンは、社会課題の解決を組織第一の使命とし、被災地からの支援要請および支援ニーズに基づき活動する特定非営利活動法人です。45の日本の国際NGOが加盟するジャパン・プラットフォーム(JPF)が作成している「新型コロナウイルスの感染が懸念される状況におけるNPO等の災害対応ガイドライン」を遵守し支援活動を行っています。

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