1. HOME
  2. Activity Reports
  3. 【連載1 能登地震から学ぶBCP】

【連載1 能登地震から学ぶBCP】

2024年1月1日に発生した能登半島地震は、多くの障がい者・高齢者施設にも甚大な被害をもたらしました。この災害を通じ、福祉施設における事業継続計画(BCP)の重要性が改めて浮き彫りになりました。
今回から始まる連載シリーズでは、能登半島地震の事例とBCPを踏まえながら、福祉の現場から見た災害支援の具体策ついてお伝えしていきます。
第一回目は 「物資編:もしもの時に困らないための3つの備え」についてご紹介します。

BCP(事業継続計画)とは?
BCP(Business Continuity Plan)は、自然災害や感染症などの緊急事態が発生した際に、事業を継続または早期に復旧させるための計画です。「令和3年度介護報酬改定」において、介護事業者におけるBCPの策定が義務づけ、高齢者だけでなく障がい者の安全を守るためにも、BCPの策定と実行が求められています。

能登半島地震

1.能登半島地震で浮き彫りになった福祉施設の課題

能登半島地震では、多くの福祉施設が以下のような課題に直面しました。

インフラの途絶
地震により、電気・水道・ガスが長期間停止した施設が多く見られました。特に生活用水の確保が困難になり、利用者の入浴や洗髪、トイレを流すといった衛生管理、食事の提供や洗濯ができないといった問題が発生しました。

道路の寸断と支援物資の遅延
震災による道路の崩壊や渋滞により、備蓄が不十分な施設では深刻な物資不足に陥りました。燃料不足により、職員も買い出しや送迎などで動けない事態に。暖房をつけずに燃料を節約し、利用者や職員が低体温症のリスクにさらされるといった危険もありました。

支援の狭間による孤立
公的な支援はさらに被害の大きい北部地域へ集中し、施設職員は通常業務と緊急対応の両方を担うことになりました。支援を要請する余裕がなく、必要な物資が届かず孤立する施設も見られました。


2.もしもの時に物資に困らないための3つの備え

以上のような能登半島地震の教訓を踏まえ、福祉施設のBCP計画に役立てられる項目を3つご紹介します。

(1)必要な備蓄の確保
発災から2~4週間は、物資の供給が不安定になります。最低でも1週間分の飲料水・食料・燃料・衛生用品を確保し、周囲の復旧や外部との連絡を待てる体制を整えましょう。

実際の現場で役立った支援物資
・プラスチックスプーン、紙コップ:配食や支援食料を食べるために必要。洗い物が出ない。
・使い捨てニトリル手袋:感染症対策や調理時の衛生確保に有用。
・消臭スプレー:避難所や狭い空間で、生活環境を整えるために便利。

(2)災害時に備えた優先順位リストの作成
支援物資の優先順位は施設によって異なります。災害時に必要とするであろう物資を事前にリストアップし、日常から備蓄を行いましょう。

最優先物資
●飲料水・生活用水
●食料(嚥下困難者向け食品を含む)
●燃料(容器も含む)
●簡易トイレ(1週間分)
●衛生・生活用品(清拭タオル、紙おむつ、マスク、毛布、タオルなど)
いざという時に買い出しにいかなくても対応できるよう、一定の分量を備えておくと安心です。

(3)迅速な支援リクエストの準備
災害が発生すると、職員は利用者の体調管理や緊急の事務対応に負われてしまいます。必要な物資を迅速に行政や支援団体へ要請できるよう、事前にリクエストフォームを準備しておくとスムーズに対応できます。

【効率的な物資リクエスト方法】
具体的な品名・数量(例:「嚥下食〇食」「ガソリン〇リットル」)を記載
優先度を区別し、緊急性を明確にする
Amazonほしいものリストの活用:必要物資を一覧で表示し、支援者とのマッチングを円滑にする

実際に能登半島地震では、「必要なものと届いたものが異なる」ケースが多発しました。こうした発注・受注ミスを防ぐために、正確なリクエストを行うことで、必要な支援を確実に受け取ることができます。

まとめ

能登半島地震の経験から、福祉施設におけるBCPマニュアルと、日ごろの備蓄の重要性が再認識されました。以下の点を抑えながらBCPを作成し、定期的な見直しと訓練をして備えておきましょう。

BCP策定のポイント
➀必要な物資の品目を明確にリスト化する
②優先順位をつけた物資リクエストフォームを準備する
③外部支援を活用し、自施設のみでの対応しない体制をつくる

大切なのは、すべての負担を自分たちで追わずに、外部とのネットワークを活用し、困ったらすぐにSOSを発信できる体制を確保しておくことです。
災害時、施設が迅速に必要な支援を受けることができるよう、ぜひこのポイントを参考にしてみてください。

次回は【能登地震から学ぶBCP:メンタルヘルス編】「災害時に求められる職員及びリーダーのメンタルケアとは」について、精神保健福祉士・臨床心理士スタッフの視点から解説します。過度な業務負担に直面する職員の事例をもとに、福祉現場に求められる心理的サポート体制についてご紹介します。

関連記事