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連載|災害の、その前に 第3話「災害支援の現場で見えた、人とのつながりがいのちを守る」

隣のおばあさんと過ごした
3.11の経験が「地域防災」の原体験。

東日本大震災をきっかけに日本での災害支援活動をスタートしたOBJですが、仙台オフィスのスタッフのほとんどが当時の被災経験があります。大規模災害を経験した当事者でありながら、現在は支援者として活動しています。

災害支援本部の弓削ディレクターも、そのひとりです。

「震災で私は沿岸部ほどの大変な被災をしたわけではありませんが、仙台市内の自宅ではライフラインが停止し、道路は分断。ガソリンも供給がストップし、仕事ができなくなりました。お隣にひとり暮らしの80代のおばあさんが住んでいることを知っていたので、すぐに声をかけて、避難所まで手を引いて向かいました。でも居られる場所がなく、ひとりにもできないので我が家でしばらく一緒に生活したんです。あの経験は災害時に人とのつながりを意識した原体験となりました」

豪雨災害支援
豪雨災害支援

窮地に陥ったとき
あなたは「手伝って」と言えますか

さらに全国で起こる災害の支援に携わっていると、「人とのつながり」によって命が守られることが多いことに気づきます。
2019年の長野県の台風19号被害の支援では、支援を得られる人とそうでない人の違いを目の当たりにし、衝撃を受けました。

「とある住宅には、ボランティアの人たちがたくさん来て、みんなでわーっと片付けをしているのに、通りを挟んだ向かいの団地に支援者の姿はありません。住人の親戚が来て手伝っている程度のようでした。その中に、足を引きずったおじいさんがいたので話を聞くと、3年前に奥様を亡くされ、団地で一人暮らしだという。階段から落ちて怪我をしたという脚を引きずりながら、避難所から片道3、40分の道を毎日歩いて往復して、誰の力も借りずにたった一人で片付けをしていると。どうして助けを求めないのか聞いたら、『親から人様に迷惑かけるなって言われていたから』と言うのです。どんなに支援が必要な状態だとしても、本人が『助けを求めてはいけない』と思い込んでいたら、声を上げるわけがないですよね。通り向かいの人は『助けて、手伝って』と言えただけ。置かれた現状だけではなく、助けてと言えるか言えないかで支援を得られるかどうか、その違いを知りました。ということは、平時から助けてと言いやすい関係性にあれば、その人の生活を早く助けることができるなとも考えたわけです」

熱海市土石流災害支援

「町内会から頼まれた人」として
その地域のことを一緒に考える

また、静岡県熱海市の土石流災害では、災害地域が土石流によって東と西に分断され、地理的な状況で行政の対応が届かない区域がありました。

「避難バスに乗り遅れた高齢者や、アパートの住人が全員避難し終えて気付かぬうちに一人だけ取り残されていた住人もいました。急勾配の地形や自治体の境界によって生まれてしまった支援の空白区域が影響していました。直接の災害起因だけではない外部環境が支援を難しくすることもあります。私たちは困難な状況の中でも、あくまで『町内会から依頼を受けて動いている支援者』として、被災した人と同じ目線で関わり、地域の自助・共助体制を壊さないように配慮しながら活動しています

熱海市土石流災害支援

隣に手を差し伸べられたら
「災害に強い社会」となる

同じ台風19号で被害を受けた千葉県館山市での支援では、老老介護での室内事故現場に遭遇しました。

「元教師の高齢女性と連絡が取れないと聞き、専門資格を持つ協力団体スタッフとご自宅に伺ったのですが、そこはゴミ屋敷でした。何度か声をかけると返事があったのですが、どうやら女性はゴミの中で倒れているらしい。でも、見られたくないから入るなというわけです。そのままでは危ないから上がらせてくださいと、20分ほど説得してやっと入れてもらうと、倒れて数日経っている状態だったのでトイレに行けず汚れてしまっていた。でも、不思議なことに口元になにか食べたような跡がついている。動けないはずなのに、どうやってと。ほかに誰かいますか?と聞くと、2階に夫がいると。真っ暗な階段を上がって2階に行くと、おじいさんがひとり、椅子に座って歌っていたんです。倒れた女性は、認知症の旦那さんをたった一人で介護していたんですね。倒れて動けない奥さんに認知症の旦那さんが何かを食べさせてあげたのでしょう。その日、奥さんは救急車で病院に運ばれましたが、運ばれる時に私に『ありがとう』と言ってくれました。それがとても心に残っています。奥さんは腰骨を骨折していたそうです。ご夫婦宅のすぐ近所には旦那さんの弟さんが住んでいるとわかり、私が行って事情を知らせると『最近兄貴には会っていなかったからなぁ』と。現代的な孤立を感じた出来事でした」

また、弓削ディレクターは「知り合いがどんな状況になっても、以前と同じ眼差しで気にかけてあげる。手を差し伸べられる社会が、ひいては『災害に強い社会』なんじゃないかなと思っています」と話します。

※災害時に支援につながりにくくなりやすい状況の例

  • 経済的な困難を抱え、日頃から周囲に助けを求めにくい方
  • 一人暮らしの高齢者や、老老介護をしている世帯
  • 身体・知的・精神などの障がいがあり、避難や情報収集に配慮が必要な方
  • 小さなお子さんを育てていて、自由に移動しにくい家庭
  • 転居して間もなく、地域とのつながりがまだ十分に築かれていない方
  • 日本語での情報収集やコミュニケーションが難しい外国籍の方や、日本語の読み書きに困難がある方
  • 単身世帯や賃貸住宅に暮らし、地域との接点を持ちにくい方
  • 「人に迷惑をかけてはいけない」という思いから、困っていても助けを求められない方
  • ペットと暮らしており、避難や避難生活に大きな不安を抱える世帯

豪雨災害支援

地域防災は「人とのつながり」が鍵
令和版のつながりを育てる

OBJでは災害支援でのこのような経験から「平時からの人とのつながり」を重要視するようになりました。地域防災とは、地域との関係づくりやつながりから始まります。人とのつながりがSOSに気づき、命を助け、つらい現状から抜け出すきっかけを生むからです。

そのために、平時からの「居場所・交流支援」「炊き出し」「防災ワークショップ」「地域防災プロジェクト」などの活動を加速させています。

「防災ワークショップ」や「地域防災プロジェクト」では、まずは参加者に知ってもらい、実際の行動に移してもらう(行動変容)ことを大切に考えています。6月に開催した『第1回防災ワークショップ 家庭防災編』の参加者からは「必要性は分かっていたけれど後回しにしていたが、ようやくアクションを起こせた。備えなくてはいけないものがたくさんありすぎて無理だと思っていたが、“一緒に”考えてもらうことで、本当に大事なことが見えてきた」との声がありました。今後も定期的につながり創出の場を作っていきます。

連載「災害の、その前に」

OBJは、災害が起きてからの支援だけでなく、災害が起きる前から地域のつながりを育む活動にも取り組んでいます。この連載では、災害現場での経験から見えてきた「本当に必要な備え」についてお届けします。

第1話「災害支援の現場で見えた“本当に必要な備え”」
第2話「食と防災を考える~食は命をつなぎ、人と人との心をつなぐもの」

平時からの「つながり」が、災害時に命を守る力になります。

家庭防災編、食と防災編に続き、2026年9月1日(火)には第3回オンライン防災ワークショップ「地域防災とつながり編」を開催します。過去2回では「防災の敷居が低くなり、1つ備えを始めることができた」「家族や周囲と話すきっかけになった」など、実際にアクションを起こした方々の声が届いています。何かを始めるきっかけとして、この機会にぜひのぞいてみてください。

詳細・申し込みはこちら

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