ヌエバ・エスペランサ村の希望の水
スペイン語で「新しい希望」という意味のヌエバ・エスペランサ村に住む13歳のマヌエルは、よく、サッカーの試合で自分が決勝点を叩きだす場面を空想しました。
けれども、実際にはそんな機会はありませんでした。
「サッカーなんて、できませんでした。走ったあとや、疲れたときには、水を飲みたくなるでしょう?1日にコップ3杯しか水を飲めないから、喉が渇くようなことはなにもできなかったんです」。
マヌエルの家では、近くの川から水を汲んできて使っていました。けれども乾季には、この川は完全に干上がってしまいます。そうなると、井戸を持っている親切な農夫が村人たちに3日に一度、一軒につき10リットルほどの水を分けてくれるのですが、とうてい十分な量とは言えません。
マヌエルの母親は、「子供たちには、次の日のことも考えて大切に水を使わなければならないと言い聞かせてきました」と言います。「食事のときに、コップに1杯だけ水を飲ませていました。かわいそうでしたが、ほかに方法がなかったのです」。
高温の環境で、十分に水を飲めずに暮らすことは、マヌエルにとっても妹のリリアンにとっても苦しいことでした。マヌエルの渇きは強く、夜も眠れないほどでした。数滴でいいから、舌に水をたらしてほしいと願いました。小さいリリアンは、熱射病の一歩手前の熱疲労という状態になっていました。
「外を歩いていると、とても暑くて、すぐに疲れてしまうので、何度もしゃがみこんでしまいました」とリリアンは言います。「そうすると、マヌエルが抱っこして連れていってくれるんです」。彼女は、母親の目を盗んで、少しだけ水を飲むこともあったそうです。
マヌエルは、「喉の渇きに苦しまないですむようにしてくださいと神様にお祈りしたこともあります」と打ち明けてくれました。
オペレーション・ブレッシング・ホンジュラスは、ヌエバ・エスペランサ村のこうした状況を聞きつけると、すぐに水を届けるために村に向かって出発しました。
さらに、ホンジュラスで井戸を掘る活動をしている団体と協力してヌエバ・エスペランサ村に貯水タンクを設置し、そこからすべての家庭にパイプで水を引きました。村人たちはパイプを埋めるための溝を掘り、給水システムの設置を手伝いました。マヌエルも作業に参加しました。やがて、村のすべての家庭が、いつでも水を使えるようになりました。
「僕が最初に蛇口を使ったんです」とマヌエルは得意げに言いました。「今は、好きなときに好きなだけ水が飲めるので、1日中だって遊べるんです。僕たちはみんな、水が欲しいという願いを叶えてくれた神様とオペレーション・ブレッシングに感謝しています」。