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【完全なる警察国家】世界に広がる中国のデジタル独裁主義

2021年10月11日/ジョージ・トーマス

※この記事はオペレーション・ブレッシング・ジャパンの母体であるCBN(ChristianBroadcasting Network)のニュースを翻訳したものです。 

2013年、中国の習近平国家主席は、「データを支配する者が優位に立つ」と語りました。以来、習氏はいわゆる「デジタル独裁主義」の青写真を描こうと、技術開発を強力に推進しています。
習氏の計画が実現すれば、中国の共産主義者政府は、自国民だけでなく、世界中の人々の膨大なデータを支配できるようになります。

ダスティン・カーマック氏は、米国国家情報長官の首席補佐官を務めた経験をもつ人物です。ワシントンD.C.にあるシンクタンク「ヘリテージ財団」の研究員であるカーマック氏は、CBNニュースの取材に答えて、「中国は、秘密裏に、あるいは公然と仕掛けたサイバー攻撃によって入手したデータのほか、長期的にはよからぬ目的に資するかもしれない、その他の分野で世界中から吸い上げた膨大な量のデータを握っているのです」と語りました。

中国国内には4億1500万台以上の監視カメラが設置されており、中国に住む人々は、世界で最も監視されていると言えます。

中国政府は今、デジタル通貨、社会保障カード、社会信用システム、ネット上のやりとりなどを使って、国民の監視を強めています。

ジェフリー・カイン氏は、「それは、人工知能と顔認識と音声認識に基づく巨大捜査網です。中国共産党は、こうした新しい技術を駆使して国民を監視しているのです」と言います。

新刊『The Perfect Police State: An Undercover Odyssey into China’s Terrifying Surveillance Dystopia of the Future(完全なる警察国家:中国の恐怖に満ちた未来の監視ディストピアへの秘密の旅)』の著者であるカイン氏によると、中国政府がこの種の監視システムを最初に導入したのは今から数年前のことで、その目的はウイグル族(中国西部に住むイスラム教徒)を監視することにあったそうです。

同氏はCBNニュースに、「ウイグル自治区では朝から晩まで、朝食をとるのも、市場に行くのも、仕事に行くのも、すべての行動がスマートフォンやあらゆる場所に設置された政府のカメラによって監視され、プライベートはなく、秘密を持つことはできず、生活全体が丸見えになっているのです」と説明しました。

カイン氏の調査によると、このようにして収集された膨大な量のデータは警察の巨大データベースに供給され、人工知能を利用して誰かが将来犯罪を犯すかどうかを予測するのに使われるといいます。カイン氏は、「重要なのは、このシステムが暴走してしまっていることです。私は『犯罪の前段階にある』として市民を拘束できる理由のリストを見ましたが、そこには『突然テントを買った』『突然タバコをやめた』などの軽微な理由が列挙されていました。市民がふだんとは違った行動をし、システムがそれを怪しいと判断すると、警察に知らせます。アプリを通じて情報を得た警察官が、その人物の自宅や職場に行き、捜査をしたり、少しばかり尋問したり、必要と判断すれば数百あると言われる強制収容所に連行したりするのです」と言います。

中国政府は、100万人以上のウイグル族をいわゆる「再教育収容所」に入れてジェノサイド(集団殺害)を行っていると非難されています。AP通信はこの夏、1万人以上を収容できると言われる収容所を独占取材しました。家族研究評議会(FRC)のトニー・パーキンズ氏はCBNニュースに対して、「実際に人命が奪われていることを示唆する証拠もありますが、ジェノサイドは命を奪うこととはかぎりません。ジェノサイドとは特定の集団や民族を消滅させることであり、それこそが彼らの目的なのです」と語っています。

専門家によると、習氏は中国と同じような政治体制をとる国々にその独裁主義的監視技術を輸出し、世界的なリーダーになることも望んでいるといいます。

国際的な人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のソフィー・リチャードソン氏はCBNニュースに対して、「例えば、国家に批判的な人物を常に追跡し、彼らが資金を得たり飛行機や列車のチケットを購入したりするのを制限できるようなツールがあれば、国家は今よりはるかに強大な力を手にすることができます」と語っています。

英国のオックスフォード大学とドイツ・ベルリンのフンボルト大学が最近行った研究から、ベネズエラ、ケニア、フィリピン、オマーンなど72カ国で約1800台の中国製監視装置が稼働していることが明らかになっています。パーキンズ氏は、「中国は現在、その影響力と資金と技術を活用して、他国による少数民族や個人への抑圧を後押ししています」と言います。

中国はまた、トルコ、キューバ、エジプト、パキスタンなど17カ国にネット検閲システムを配備し、ニュースやメディアのウェブサイトを遮断しています。リチャードソン氏は、「すべてを考え合わせると、中国はテクノロジーを利用して、意義を唱える人のいない社会を作ろうとしているのだと思います。非常に恐ろしい考えです」と言います。

中国は香港の民主化デモに参加した人々を弾圧するためにこれらの戦術を用いました。7月にはキューバで数万人が参加する反政府デモが起こりましたが、中国は人々の通信を遮断してキューバ政府を支援しました。

カーマック氏は、「この種の技術は、インターネットのトラフィックフローを制限したり、キューバで行われたように、時に抗議活動の初期にインターネットを遮断したりするのに利用されてきました」と語っています。

その一方で、IBM、マイクロソフト、オラクルなどアメリカの7つの企業が、中国政府によるウイグル族の監視に自社の技術を利用されているにもかかわらず、そのことに対してなんの罰も受けていないことが新たな調査で明らかになっています。カイン氏は、「多くのアメリカ企業が不意打ちを食らったと思います。彼らはこの数十年間、市場やビジネスチャンスや利益を得る機会を求めて中国と付き合ってきましたが、今になって、自分たちが悪魔と取引をしていることに気付いたのです」と指摘します。

それは、世界で情報優勢を確立し、自国民や世界中の人々をデジタルで支配しようと目論む中国政府にデータという宝の山を手渡そうとする取引です。

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