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“災害多発時代に私たちができること”「市民ソーシャルワーカー育成プロジェクト」インタビュー第一弾

インタビュー第一弾/ OBJ緊急災害支援スタッフ伊東

オペレーション・ブレッシング・ジャパン(OBJ)は発災時、市民の力で困っている人を助ける仕組み「市民ソーシャルワーク」、それを担う「市民ソーシャルワーカー」を育成するプロジェクトを立ち上げました。

市民ソーシャルワーカー育成プロジェクト概要記事はこちら

今回は、このプロジェクト立ち上げに携わった方々3名のインタビューを紹介致します。第一弾は、OBJの緊急災害担当スタッフ伊東に話を聞きました。


―災害時は真っ先に被災地に入る緊急災害支援担当の伊東さん。まずはソーシャルワーカー育成プロジェクトの立ち上げに至ったきっかけを教えていただけますか?

伊東:昨年、台風19号災害支援で長野に入った時、初めてソーシャルワーカーと一緒に現場を回ったことが大きなきっかけとなりました。そのソーシャルワーカーが、ミッションからしだねから派遣された精神保健福祉士の武山さんです。
そこで、「自ら助けを呼べない被災者が、こんなにもたくさんいるのか」という現実を目の当たりにしました。今までの支援活動では、そういう人たちの姿が見えてこなかったんです。

館山【災害直後の千葉県館山市。どのお宅も被災しており、どこから支援に入るか優先順位をつけるのが難しい。】

【浸水被害が深刻なお宅の清掃支援にあたる伊東とミッションからしだねの武山さん】

伊東:自分たちだけでは、どこにどんな困りごとを抱えている人がいるかわかりませんでした。緊急時はボランティアセンターも立ち上がっていませんから、その時その時現状を見ながらどこのお宅に支援に入るかを判断します。

しかし、災害発生直後はどこも助けを必要としていますから、目に付いたところか、もしくは声をかけられたお宅の支援に入るしかありません。そうなると、自分で助けを求められない人、例えば体の不自由な高齢者や、何かしら障がいをもっている方のところへは、なかなか支援を届けることができませんでした。

【支援が必要だと思われるお宅を訪問する武山さん。その中には目が見えない認知症の高齢者や、アルコール依存症で治療が必要な方も。】

伊東:武山さんは、日ごろ培われた技術を用いて、そのような生活困窮者の人のところへどんどんたどり着いていきました。どこにどんな助けを必要としている人がいるのかを突き止めて、確実に命を救っていくソーシャルワーカーの姿を見て、「これは凄い」と感じたんです。このスキルを一般の人たちも学んでいけば、もしもの時に住民同士で助け合える仕組みができるのではないかと直感しました。

―ソーシャルワーカーである武山さんとの活動を通して、新しい支援の形が見えてきたということでしょうか?

伊東:そうです。ソーシャルワークとは、「自分から助けを求められない、その結果制度やサービスの狭間から零れてしまった人」を、必要な支援に繋いでいく働きです。いうならば、困りごとを抱えている人を地域から孤立させないようにすることです。その役割を一般の市民も担うことができたら、より多くの生活困窮者のもとへ支援を届けていけるのではと期待しています。

―そこで市民ソーシャルワーク育成プロジェクトを立ち上げられたんですね。

はい。そのプロジェクトの一環として、災害現場で役立ったソーシャルワークのスキルを一般の人も学ぶことができるように、今回市民ソーシャルワークのガイドブックを制作しました。

【被災地で実際に起きた事例をもとに作成された、市民ソーシャルワークガイドブック】

伊東:市民ソーシャルワーカーというのは、「困った人の力になれないか」という一人ひとりの意識から生まれていきます。災害はいつ起きるかわかりませんから、日頃から自分の近所の状況を知っておくことが大切です。例えば、「あそこに一人暮らしのおばあちゃんがいるな」とか、「あそこに住んでいるご夫婦は体が不自由だったな」とか…そういう些細なアンテナを張っておくこと。そして、いざというときに声をかけられるような距離感にいることが、人の命を救うことに繋がっていきます。

―最後に、市民ソーシャルワークを学びたいという方へメッセージをお願いします。

伊東:市民ソーシャルワーカーの役割は、「現代社会で生きづらさを感じている人々」の「社会的孤立をなくす」ことにあります。専門職の力だけでなく、地域住民の見守りや些細な気づきが、災害時は大切な人の命を救う可能性を持っているのです。

このガイドブックは、地域住民同士による助け合いネットワークの実現へ向けた一歩であり、賛同してくださる方の輪が広がっていけばいくほど、その実現は確実に早まっていきます。皆さんもこの輪に加わっていただければ、これほど力強いことはありません。災害が起きたとき、声なき声の「助けて」にすぐ飛んで応えていけるような、そんな温かく頼もしい社会になればいいなと思います。

ー伊東さん、ありがとうございました!次回のインタビューは、ミッションからしだねで精神保健福祉士を務める武山さんのお話をご紹介いたします。

【市民ソーシャルワーカー育成プロジェクト事務局】

特定非営利活動法人オペレーション・ブレッシング・ジャパン

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市民ソーシャルワーカー育成プロジェクトプレスリリース.pdf