ゴスペルで福島に光を灯し続ける 佐藤ゆかりさん(ゴスペル講師)
3.11で未曾有の災害に見舞われた福島県南相馬市ー被災者の心を支えるために結成されたRISE UPゴスペルクワイヤは、発足から8年が経とうとしています。
日常を奪われた人々の心の傷に寄り添い、ゴスペルの力で希望の光を灯し続けてきたRISE UPゴスペルクワイヤは、これまで様々な講師の方々によって支えられてきました。
今回は、4年前からゴスペル講師として指導にあたってくださっている、佐藤ゆかりさんのインタビューをご紹介いたします。
パッと周囲を明るくする笑顔と、深くパワフルな歌声が魅力的なゆかりさん。なんと、愛知県から往復20時間以上をかけて南相馬市を訪れ、ゴスペル指導を行なってくださっています。
そんな遠方から駆け付け、被災地を励まし続けるゆかりさんを突き動かすもの、RISE UPにかける想いは一体何なのかー彼女の使命を深掘りします。
講師 佐藤ゆかり
愛知県一宮市出身。シンガー、ゴスペルディレクター、ピアノ、ボーカル講師、音楽伝道師。NYハーレムの様々な教会でソロシンガーの経験を持つ。
現在は愛知県のみならず国内外で活動、楽曲提供もしている。
神様が示された“福島に仕える意味”
ゆかりさん:「正直、講師の話をいただいた時は、『私に一体何ができるだろうか?』という問いがありました。
福島の方々が抱える痛みは私の理解をはるかに超える悲痛なもの。その中で自分が果たせることは何なのか、すぐに答えはでませんでした。
しかし、神様に『どうか、私にできることを教えてください』と祈るうちに、傷ついた福島のために神様の手足となって、ゴスペルを届けたいという思いが与えられたのです。」
国内外でゴスペル指導をされてきたキャリアを用いて、アルト・ソプラノ・テナーとひとつひとつのパート、そしておひとりお一人への声に磨きをかけていくゆかりさん。
レッスンはいつも、和気あいあいとした雰囲気のなかストレッチからスタートします。メンバーの年齢は幅広く、最年少は小学校2年生、最年長は70代ですが、年齢の違いを感じないほどRISE UPは「ゴスペルを歌いたい!」という熱意の一体感で満ちています。
ゆかりさん:「愛知から南相馬まではかなりの長距離運転なので、やはり体力は使います。ですが、今では「家族」と呼べるメンバーと共に歌えることが、私の大きな生きがいになっていきました。
それと同時に、技術的な面を指導したり一人ひとりと関わるうちに、被災地に住む方々が抱えているものが、少しずつ見えてくるようになったんです。」
「話せない心の痛み」癒すゴスペル
ゆかりさん:「いつも明るい笑顔の絶えないが女性メンバーが、実は心に深い傷を負っていて、音楽指導をしている時ふと涙を溢された瞬間がありました。
言葉にできない、分かち合うことが難しい痛みが心の奥深くに隠されていて、その傷にふと触れる場面があります。
ゴスペルは、ただの音楽ではなく、心に光をもたらす力を持っていますが、
深い傷や苦しみの中にいる時でも、神様の愛を感じられる瞬間が、歌を通して生まれているのです。」
RISE UPのメンバーとして精力的に活動している女性メンバーMさんは、まさにゴスペルの力を体験した一人です。
その貴重な体験を、Mさんは次のように語ってくださいました。
「私の人生の中で、ある時とても辛く悲しい出来事が起こりました。
人と会うのも話すのもつらい、大好きな音楽も聞けない、過酷な時期でした。
しかしそんな暗闇のなかで、唯一ゴスペルだけは聴き続けることができたんです。
ゴスペルの力強さが私を前向きにし、慰め、癒してくれました。その力に触れた時、単にゴスペルが『楽しい』ものから、『生きるエネルギー』に変わったのです。
今の私がいるのは、まさにゴスペルの出会いによるもの、とても感謝しています。」
深く傷ついた人々の心にある痛みに、ゴスペルを通じて神の愛を伝えること、その働きの器として活動を続けることに、ゆかりさんは強い信念を持っています。
ゆかりさん:「私が大切にしているのは、技術的な指導だけでなく、『どういう思いでゴスペルを歌うか』。その姿勢です。
活動の中で、メンバーの誰かがソロを任されたりする場面がありますが、皆さんよく『うまく歌わなきゃ』、『失敗しないようにしなきゃ』と心が不安にとらわれてしまうのです。
そうではなく『神様はありのままの姿のあなたを愛しているから大丈夫』と伝えると、皆さんはホッと笑顔を見せられます。
ゴスペルは『良い知らせ』、『福音』という意味を指すように、
そこには私たちを心から愛し、全てを捧げてくださった大きな神様の愛が込められています。
その与えられた愛の喜びを知ることで、メンバーの方々の歌う表情や声の出し方も大きく変わりました。
まさに、神の愛による解放を体験したのです。」
「神の手足となって福島を愛する」働きを続けたい
オペレーション・ブレッシング・ジャパンの働きとともに、この地で神の愛と希望を伝え続けていきたい、と語るゆかりさん。
そこには、被災地の癒しのため、神の手足となり支え続けることの熱い願いがあります。
ゆかりさん:「南相馬の人々は、本当にたくさんの痛みを抱えているのを肌で感じます。
その傷は、簡単に癒えるものではないし、ゴスペルの押し付けで癒されるものでもないんです。
だからこそ、私は彼らのそばにいて、彼らと一緒に歌い、一緒に涙を流したい。
喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい。(ローマの信徒への手紙12章15節)
ゴスペルを通して人々に神様の愛が流れ、心の暗闇から解放されるように、
「神の愛を示す」というビジョンを掲げたオペレーション・ブレッシング・ジャパンと共に、私の使命を果たし抜きたいと思っています。」
来年で3・11から14年を迎えようとする今も、ゆかりさんは遠く離れた愛知から南相馬へと足を運び、一人ひとりの歌声と心に寄り添い続けています。
震災の痛みが癒えるには、多くの時間がかかります。しかし、ゴスペルの歌声に触れることで、人々は少しずつ前を向き、希望を取り戻す姿が見られるようになりました。
「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣く」こと。それはまさに、私たちが目指す支援の在り方であり、ゆかりさんの捧げるゴスペル活動の根底に流れる思いです。
震災から立ち上がり、希望のゴスペルを通して人々の心に光を届けたい。そんなRISE UPの活動は、復興を願うすべての人の手によって支えられています。
RISE UPの歌声が、福島の復興と癒しのシンボルとして広がっていくために、皆様からの温かい応援をどうぞよろしくお願いいたします。
そして今週11月9日(土)11時から開催される仙台ゴスペルフェスティバルに、RISE UPメンバーが出演します!
痛みや苦しみの先にある希望を手にし、力強い賛美を捧げるRISE UPの歌声を、ぜひ聞きにご来場ください。