貧困の悪循環を断ち切る
それは「最後の晩餐」を思わせる光景でした。メイラはコーヒーを1杯入れて、4人の子供たちにまわしました。子供たちは順番に、バターもなにもついていないパンをコーヒーにひたして食べました。
今日1日の食事はこれだけです。これから2週間、同じ食事が続きます。そうしないと、暮らしていけないのです。
メイラは4人の子供を抱えたシングルマザーです。彼女は子供たちに安全な家を与え、食事をさせ、病気になったら医師にみせ、学用品を持たせるために、小さなパン屋を営んでいました。けれども、どんなに一生懸命働いても、売り上げはごくわずかでした。毎日の暮らしに必要な最低限のものは買うことができましたが、パン作りの材料を仕入れたり、子供たちの学費を支払ったりするのはとてもたいへんでした。
メイラと娘の1人には喘息の持病がありました。あるとき、娘が大きな発作を起こし、薬が必要になりました。メイラは手持ちのお金をすべて出して、娘のために薬を買いました。
お金がなくなったメイラは、日々の暮らしのための支払いやパン作りの材料を買うために、家財道具を売りはじめました。
「私は、自分がたいへんな苦労をして買い揃えてきたものを、信じられないほど安い価格で手放していきました。自分の首を絞める行為であることはわかっていましたが、子供たちを飢えさせないためには、そうするしかなかったのです」。
売るものがなくなったメイラは、プロパンボンベや冷蔵庫など、パン作りのための道具も手放しはじめました。冷蔵庫がなければ、材料はすぐに腐ってしまいます。プロパンボンベがなければガスオーブンを使えず、旧式の電気オーブンではパンを焼ける量は少なくなってしまいます。
一家はみるみるうちに困窮し、バターもなにもついていない少量のパンを薄いコーヒーにひたして味をつけて食べるようになりました。「だんだんと希望が消えていきました」とメイラは言います。
貧困の悪循環に陥ってしまった彼女に、オペレーション・ブレッシングが支援を申し出ました。パン屋を再開し、少しだけ商売を大きくできるようにすれば、あとは自力で生活を立て直すことができるのです。OBIはメイラのもとにチームを派遣し、新しいプロパンボンベと冷蔵庫のほか、パン屋を再開するために必要なものをすべて提供しました。
彼女はそのときのことを、「感動のあまり、言葉もありませんでした」と回想します。「私は今では子供たちにゼリーを買い与え、ケーキを焼いてあげることができます。もう商品が傷むのを心配しなくてよいのです」。
OBIは、メイラとその娘に喘息の薬も提供しました。薬があれば、喘息の治療のためにビジネス資本を削る必要はありません。
「このお薬は、神様からの贈り物です!」と彼女は言います。