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【福島復興支援】「震災といじめで心折れて」孤立する若者に居場所を

オペレーション・ブレッシング・ジャパン(OBJ)の復興コミュニティスペース「ブレッシングルーム」が、今月で開設2周年を迎えました。
2年間活動を続けてきた中で見えてきた課題、そしてこれからの展望について、南相馬復興支援事業コーディネーターの平井からご報告します。

以下平井からの現場リポートです

各段に広がった地域とのつながり

現在ブレッシングルームでは、学童保育、コミュニティカフェ、英語教室など多様なプログラムを通じたコミュニティ支援を行っています。
2年前と比べると、学童保育の登録児童数は3倍の39人になり、多くの子ども達や保護者の方とかかわることができました。
市内のボランティアの人も加わってくださったことで、地域の大人(祖父母世代、親世代)が一緒になって子どもを見守るネットワークも広がりました。
ここで顔見知りになることでお互い声をかけやすい関係になり、町でばったり出会っても会話ができたなど、地域のつながりが強まっているのを実感しています。大変うれしい変化です。

南相馬のご当地かるたで遊ぶ子どもたちとボランティアの佐藤さんご夫妻

新たに聞こえてきた若者の悲痛な声

先月から新たな取り組みとして、若い世代を対象とした居場所づくり支援も開始しました。
活動を始めようと思い立った理由は二つあります。
ひとつめは、ここのカフェに足を運ぶ若者の中に、震災当時受けた心の傷をいまも抱えて、進学や就職に悩んでいる人たちがいたこと。
ふたつめは、地域のNPO団体と話し合いを重ねる中で、不登校や引きこもりになった人達へのサポートを求める声が非常に多く聞こえてきたことです。

人生で最も多感な時期に震災を経験した子どもたちは今、進学や就職といった人生の大きな節目に立たされています。しかし、当時の過酷な体験が心の傷となったまま、進学や就職に結びつかず社会と繋がりを失くしてしまうケースが多く見受けられました。
私たちのブレッシングルームに足を運ぶ若者からも、以下のような声が届いています。

「原発事故のあと避難先で同級生のいじめにあい、そこに受験のプレッシャーが重なって心が折れてしまった。今は心療内科に通いながら仕事を探している」(20代女性)

「震災の時は小学生で、みんな思いっきり外遊びしたい時期。なのに放射能のせいで行動が全部制限されて、みんなが大きなストレスを抱えていた。そこでいじめのターゲットにされて学校に通えなくなり、人が怖くなった」(10代女性)

カフェに足を運び話をしてくれた学生(10代)

こうした不登校や就職に悩む若者を支えるため、全国各地にフリースクールやユースプレイスが設置されています。
ユースプレイスとは、すぐに就労や進学が難しかったり、社会活動に不安のある若者がさまざまなプログラムを体験できる場所のひとつです。
しかし、原発被災地である福島県の相双地域(相馬市、南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、新地町、飯舘村)には設置されていません。

南相馬市でひきこもり支援に携わる関係者は、「ここからユースプレイスに通うには、福島市か仙台市などに行くしかない。物理的距離から通うのが難しく、結果的に行くのを諦めて悩みを抱えたまま時間だけが経過してしまう」という厳しい現状を語っています。
この事実を知ったとき、OBJの南相馬復興支援コーディネーターとしてもっとできることがあるんじゃないかと、この若者居場所づくり事業に踏み切りました。

ひきこもり問題は、そもそも社会とのつながりがほとんどないためなかなか実態を把握しにくいのが現状です。
隠れて見えてこない課題に寄り添い支援するためには、地域で活動している団体との連携が欠かせません。
ブレッシングルームでは、毎週他団体の方といっしょに情報共有会議を行っています。それぞれが抱える地域課題を共有しながら、互いの強みを活かして協力できることはないかを話し合い、解決へ結びつけることが目的です。

情報共有会議の様子。子育て応援を担う任意団体や、南相馬市市民活動サポートセンター、地域教会の方など多様なメンバーが参加

孤立を見過ごさない社会へ

2016年度の内閣調査によれば、学校や仕事へ行かず、半年以上自宅に引きこもっている15~39歳の引きこもりは54万1,000人に上ります。さらに2019年、初めて40~64歳の引きこもりについての調査結果が公表されましたが、その数は若年引きこもりをさらに上回る61万3,000人と判明しました。
ひきこもりは長期化するほど脱却することが難しく、不登校が始まった中高生のうちにどこかの支援につなげることが重要だとされています。

学業や人間関係で悩んだり、思い描いていた道を歩めずに挫折することは誰しもあるでしょう。
そんな時は、何も考えないでちょっと立ち止まる日があってもいい。十分に休んで元気になったら、「またやってみようかな」と立ち上がればいい。
そんな若者の息抜きができる場所、背中をそっと押してくれる場所として、ブレッシングルームが機能していければと願っています。

スタッフと学校生活について話す地元中学生

現在は、相双地域を対象としたひきこもりの実態調査を進めています。
アンケートをもとに地域のNPO団体からヒアリングをおこない、市町村ごとのひきこもりの年代や性別、抱えている背景について調査していく予定です。

結果をもとに支援プログラムの内容を調整しながら、ブレッシングルームを居場所として開放していこうと考えています。
コロナ禍できうつ症状を訴える10代も急増しているなかで、ここ南相馬から、一つのこころも取りこぼさない支援に取り組んで参ります。続けて私たちの活動の応援をよろしくお願いします!

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