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大切なのは「大人が夢にむかってチャレンジすること」。南相馬初のスコーン屋・荒美奈さんに聞く「福島で思い描く未来」

目を疑うような光景・状況に直面させた東日本大震災は、人々の日常や人生に大きな影響を与えました。あの日をきっかけに、故郷について、自分の仕事について深く考えた人、自分の人生を「どう生きるか」と探った方も多いのではないでしょうか?

オペレーション・ブレッシング・ジャパンは、震災によって被災した方々が、「新しい人生の意義を再発見し、新しい一歩を踏み出す」ことを応援しています。今回は、震災で地元が大きな津波被害にあい、一度は希望を失いかけたものの、スコーン屋という夢をかなえた荒美奈さんのストーリーをご紹介します。

「身体も心もごきげんに」がモットーのscone.wacca 荒美奈さん

先週復興コミュニティスペース・ブレッシングルームで、荒さんが営むスコーン屋scone wacca.の販売会が行われました。
プレーンや定番のチョコチップだけでなく、チーズや桑ホワイトチョコチップなどさまざまな味を楽しめるとあって、販売会にはすぐにお客さんの列が。
「心と体に良いものを」をモットーに、なるべくシンプルな材料で手作りされたスコーンは、子どもから大人まで、口にすると誰もがほっとできるような優しい味わいで人気です。

「この味食べたい!」「これも!」と子どもたちにも大人気

「家事や育児でがんばっているお母さんや、仕事でだれかのために一生けん命働いている人が、
スコーンを食べて『よし、また頑張ろう』と思ってもらえるよう、願いを込めてつくっています」

自身のスコーンを前に想いを語る荒さんは、いつも笑顔できらきらとしたエネルギーに満ちています。
しかしその夢をかなえるまでの道のりは決して平たんではありませんでした。

12年前の東日本大震災で、当時住んでいた相馬の地域一帯が大津波に襲われ、友人や親族、近所の方が亡くなりました。
自宅も車も流され、一瞬にして黒い波に沈んだ部落。
もともと高齢者の多い地域でしたが、人口はどんどん減少し、個人のお店も次々とシャッターが下り、町は活気を失っていきました。

福島を「こわくて、つらい思い出の場所」ではなく、「居心地のいいホッとできる場所」に変えていきたい。
子どもたちが「またここに帰ってきたいと思える場所」にしたい。

その思いに突き動かされ、荒さんは20年間務めた介護職から、夢だったスコーン屋さんへの転身を決意。
まったくの未経験・未知の世界でしたが、女性の社会参加を応援するicoiさん主催のcoしごと講座で自身のスキルを磨き、試行錯誤を経て、2022年念願のスコーン屋の夢をかなえました。

現在は南相馬市内に留まらず、浪江や県内の各地のイベントや店舗先で、多様な味のスコーンを販売しています。

「経験もない。資金もない。誰かに反対されるかもしれない。
できない理由を考えていたばかりの私が、自分の子ども達には
『頑張れ、頑張れ』と声をかける。
それで果たして子どもたちが「大人になること」に希望をもてるのかと、ある時ハッとしました。

おそれず何度でもチャレンジしていい。
自分が「やりたい」と思うことに向かって、楽しんで挑戦する。
そんな大人の背中を見た子どもたちが、自分の未来に希望を持てるようになると思うんです。
私が大好きな福島の地で、そんなワクワクに溢れた子どもたちが育ち、活気ある町に変わっていくことを信じています。」

自分の「好き」がつまったスコーンが、荒さんの宝物です

一度は震災でこれまでの人生が根本から覆され、希望をなくしかけた荒さん。「自分にはたしてできるのだろうか」と自信をなくしたり、思うように計画が進まず立ち止まることもたくさんありましたが、自分の「やりたい」という気持ちを大切に歩み続けました。

「私たちは完璧じゃなくていいし、必要なときは誰かを頼ってもいいと思います。
そうやって私も、色んな人たちに支えられてやってくることができました。
来年の3月11日は、悲しいことばかりを思い出す日ではなく、
何かちょっとでもいいから、この場所の未来につながることにワクワクできる日になるように過ごしていきたいです。
『おいしいスコーンを焼く』という私にできることを通して、地域で頑張る人たちを今度は私が応援していこうと思います。」

東日本大震災から12年。今だから思うこと、始めたいこともあるのではないでしょうか。今回ご紹介した荒美奈さんの挑戦と想いが、みなさんの行動の励ましになれば幸いです。

オペレーション・ブレッシング・ジャパンは皆様の寛大なご支援に支えられ、継続的に福島で震災復興支援を行ってきました。心から感謝申し上げます。時間が解決してくれることもありましたが、一方で時間が経過したからこそ複雑化し深刻化している問題が明らかになってきています。ブレッシング・ルームを拠点としてOBJはこれからも地域の皆様とともに活動を続けていきます。超高齢化社会における復興コミュニティ支援はあまり前例のない領域へ入っていくことになりますので、どこか遠いところの問題として忘れることなく、関心をお寄せいただけましたら幸いです。皆様の応援とご支援が、荒さんのように地域のために頑張る方々や次の世代の希望となります。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

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