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【スタッフレポート】ただ話を聴くことから始まる、地域の再生――浪江町・傾聴訪問の歩み

福島県双葉郡浪江町。
東日本大震災と原発事故の影響により、かつて2万人を超えていた人口は大きく減少し、現在戻っているのは震災前のわずか1割ほどにとどまっています。

地域コミュニティは大きく損なわれ、かつて自然にあったご近所同士のつながりは大きく損なわれました。
その中で、故郷へ戻った住民の高齢化が進み、ひとり暮らしの高齢者や地域とのつながりが希薄な方々は、日々の孤独や不安を抱えながら暮らしています。

福島県浪江町役場の看板

浪江町役場の看板

「ただ話を聴く」ことから始める支援

OBJでは、こうした状況の中で暮らす方々の孤立を少しでも和らげたいとの思いから、2025年8月より「傾聴訪問活動」を開始しました。

この活動で大切にしているのは、「ただ話を聴く」ことです。
玄関先での挨拶だけではなく、顔を合わせ、時間をかけ、その人の言葉に耳を傾ける。
つらかった経験、避難生活での苦労、大切な人との別れ、病気による生活の変化——それらを安心して語れる関係を育み、「ここなら心を開ける」と感じてもらえる場をつくることを目指しています。

福島県浪江町 防潮堤からの請戸海水浴場と海岸防災林

防潮堤からの請戸海水浴場と海岸防災林

地域との連携から生まれた広がり

この活動は、2022年より小高伝道所・浪江伝道所で牧会を務める飯島信牧師と、2021年から浪江町に暮らすOBJスタッフの二人三脚で進めています。

当初は、支援を必要としている方との接点がなく、訪問先を見つけることすら困難でした。
しかし、浪江町社会福祉協議会、元町議会議員、行政区長の皆さまからの情報提供やご協力をいただくことで、少しずつ地域の中で孤立している方々と出会うことができました。

約5か月の間に、これまで全く接点のなかった14名の方とつながり、計31回の訪問を実施。現在も月3〜4回のペースで活動を続けています。

浪江のひまわり畑

浪江町のひまわり畑

心がほどけていく時間

傾聴訪問では、1回につきおよそ1時間、その方の人生に寄り添う時間を持ちます。

回を重ねるごとに、表情がやわらぎ、言葉が増え、笑顔が見られるようになる——その変化の一つひとつが、私たちにとってかけがえのない歩みです。

特に印象的だったのは、知的障害のある60代後半の女性との出会いでした。

ご両親も妹さんもすでに亡くされ、地域とのつながりはほとんどありませんでした。
最初は警戒され、玄関先での短い会話が精一杯。それでも訪問を重ねるうちに、少しずつ心を開いてくださり、やがて家の中へ招いてくださるようになりました。

家族の写真アルバムを見せてくれたり、一緒にトランプをしたり。いまでは、私たちの車の音が聞こえると玄関まで出てきて迎えてくださいます。

福島県浪江町 ソーシャルアクション

トランプをして笑い合う時間が生まれました

ある日、その方がぽつりと「駄菓子屋さんに行きたい」と話してくれました。
子どもの頃、お母さんが駄菓子屋を営んでいた思い出があり、今でも懐かしくて食べたくなるのだそうです。

私たちだけでは、その願いを実現することはできませんでしたが、地域の自立支援サービスへとつなぐことで、その「行きたい」という思いを形にすることができました。

小さな願いが叶ったとき、無邪気に喜ぶその姿に、私たちも胸が熱くなりました。
そして同時に、支援は一団体だけで完結するものではないことを、あらためて実感しました。

浪江町の田畑と夕焼け

浪江町の田畑と夕焼け

点から面へ——共助の土台づくり

私たちにできることは決して大きくありません。

けれども、地域の事業者、行政、社会福祉協議会などと連携することで、支援は「点」から「面」へと広がります。こうした関係性の積み重ねこそが、いざという時に声をかけ合える地域の土台となり、災害弱者を守る力へとつながっていきます。

OBJのソーシャル・アクションは、地域課題に向き合う方や協力団体とつながり、プロジェクトの立ち上げと初期運営を支えながら、やがては地域自身が担い手となることを目指しています。

市民ベースでのつながりが育ち、助け合いが自然に生まれる地域へ。その歩みを、私たちは伴走者として支えていきたいと願っています。

福島県浪江町 請戸川の白鳥

請戸川の白鳥

ともに、この歩みを支えてください

浪江町での傾聴訪問は、まだ二人体制での小さな取り組みです。
しかし、訪問のたびに確かに感じるのは、「人はつながりの中でこそ力を取り戻していく」ということです。

一人ひとりに寄り添う小さな行動が、やがて地域全体をあたたかく照らしていく。
その可能性を、私たちはこの町で確かに感じています。

この活動は、皆さまのご支援によって支えられています。
孤立を防ぎ、地域のつながりを育てるこの歩みに、ぜひ力をお貸しください。

ともに、支え合える地域の未来を築いていきましょう。

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